28 / 137
第28話 絶望の片思い
しかし一回口から出てしまった言葉はもう戻らない。
学は僕のことをまじまじとそれこそ穴が開くほど見つめてから口を開いた。
「……陽馬、もしかして、おまえ彼女できた?」
「え? あ、違っ……」
「それなら、ちゃんと好きって言ってあげなきゃだめだぞ。その、特にシテるときはさ、女の子ってそういう言葉欲しいみたいだからさ」
「学は、彼女から好きって言って欲しい?」
「え? そりゃ……言われて悪い気はしないわな」
学は頬をポリポリとかきながら照れている。
そんな親友の姿を見て、僕はうらやましいと思い、その瞬間霧が晴れるように自分の気持ちが見えた。
ああ、そうか。僕は律に好きって言って貰いたいんだ。
それはイコール僕が律のことを好きだっていうこと……。
でも完全な片思いの恋。
だって律が相手をしてるのは僕だけじゃないから。
僕は大勢の中の一人にすぎないから。
もしかしたら、律の周りに群がるたくさんの女の子の中に彼の本命がいるのかもしれない。
そして律はその子には好きだと囁いているのかもしれない。
超容姿端麗で軽いけど、ちゃんと自分の将来のことを見据えている……そんな律が本気で好きになる相手ってどんな女性なんだろう。
激しい嫉妬心が胸を苛み、僕は自分の片思いに絶望を感じた。
ともだちにシェアしよう!