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第29話 切ない情事

 胸に重く切ない片恋を抱いたまま春休みに突入した。  ある昼下がり、父さんは会社、母さんは友達の家へDVD鑑賞会に出かけて留守。  そんな時を見計らったかのように律が僕の部屋へやって来た。 「はーるま」 「律っ! いつも言ってるだろ。部屋へ入るときはノックしてって」 「何? オナニーの最中見られるとやだから? 今更ー」 「違うっ」  いつまでも過去のことを引き合いに出す律に僕がむきになると、クスクスと本当に楽しそうに笑う。 「せっかく二人っきりなんだから、素直になれって陽馬」 「……今日は女の子と一緒じゃないの?」 「ないよ。もう女の子はこの家へ上げるのやめることにしたしね」 「……何で?」  つい最近まで喜々として連れ込んでいたくせに。 「ベッドに女の香水の匂いが残るから」 「……それこそ今更だよ? 律」 「まーまー、いいじゃん。そんなことより陽馬……」  律が勉強机に向かっている僕の傍までやって来る。  軽々と僕の体を持ち上げると、ベッドに放り出した。 「ま、待って……律」 「だーめ」  あっという間に裸にされ、律の口で高みへと昇りつめさせられ、息が整う間もなく二人一つに繋がっていく。 「あっ……やだっ……。律……」  向かい合い座ったままの体勢で僕は律の雄を受け入れていた。 「苦しい? 陽馬?」  律が僕にキスをしながら聞いて来る。  必死に頭を縦に振る僕。  この体勢は僕の体重がかかるので、より深く律を受け入れることになるのだ。  お腹の奥の奥まで律でいっぱいで、苦しい。 「苦しいけど、気持ちいいんだろ?」  意地悪な律の言葉に、今度は頭を横に振る僕。 「嘘つき」  律は快感に掠れた色っぽい声で僕に囁くと、下から思い切り突き上げて来た。 「やぁぁっ……」  僕の性器から白濁とした液体が迸り、二人の腹部から胸部を汚す。 「体の方が素直だね、陽馬。……可愛いよ」  イッた直後の霞む頭で思う。  可愛い、か……。  律は本当によく僕に可愛いっていうけど、他の女の子にも同じように言ってるのかな。  きっと言ってるんだろう。  僕なんかにもそんな台詞が囁けるんだから、律の周りにいる美少女たちになら、スラスラと甘い囁きが出てくるはずだ。  その中でも律から『好き』という特別の囁きを貰えるのは誰―― 「何、考えてるの? 陽馬」  律が中に入ったまま僕の体をベッドへ押し倒す。 「何も、考えてなんかな――」  最後まで言い終わらないうちに、律が凄い勢いで腰を進めて来た。 「あっ……ああっ……あっ……あっ……」  シーツの上で体がずり上がるのを引き摺り戻され、最奥の気持ちいいところを集中的に突かれる。  それこそ本当に何も考えられなくなり、僕は律の背中に縋りついて我を忘れて行った。

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