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第30話 プレゼント選び
春休みが終わりに近づいて来た。
高校三年生の始業式である四月の七日は律の十八歳の誕生日だ。
僕は律への誕生日プレゼントを選ぶため、駅前のショッピングモールへ来ていた。
うーん、いったい何を贈ればいいんだろ?
律にピッタリの贈り物と言えばピアスとかのアクセサリー類とか洋服なんだろうけど、僕にはそれを選ぶセンスもないし、何より予算が完全オーバーだ。
僕はショッピングモールを彷徨い、そこで画材のコーナーを見つけた。
そうだ。スケッチブックはどうだろう?
将来はデザイナーになりたいと薄茶色の綺麗な瞳をきらきらさせていた律を思い出す。
スケッチブックなら僕の乏しい予算でも買えるし、あって困るものでもない。
ちょうど律が使っていたものと同じサイズのスケッチブックが見つかった。
赤いのと青いのがあったので、青い方を選ぶ。
律が今使ってるのが赤い色だったことを思い出したからだ。違う色の方が新鮮でいいだろう。
それに、なんとなく律にはクールな青の方が似合うような気もしたし。
レジへ行き、プレゼント用の包装紙に包んで貰う。
律が自宅へいないことを確かめてから、僕は帰り、自分の部屋のクローゼットの中へプレゼントのスケッチブックを隠す。
初めは気分が高揚していたが、徐々に僕の悪い面である後ろ向きな性格が頭をもたげ始める。
誕生日プレゼントにスケッチブックって、ちょっとしょぼすぎるかな?
きっと律はたくさんの女の子からプレゼントを貰うことだろう。
みんなきっと律に似合うお洒落なものを贈るに違いない。
律、スケッチブック、喜んでくれるかな? ……いや、まあ、喜んではくれるだろうけど、他のたくさんのプレゼントの山に埋もれてかすんでしまいそうな気もする。
僕のプレゼントを一番喜んで欲しいなんて、僕はどんどん欲張りになってく。
叶うはずなんてない恋なのに。
プレゼントを隠したクローゼットを一瞥し、僕の寂しさは溜息となって零れ落ちた。
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