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第32話 律の誕生日当日2
その日の夕食は律のリクエストのものばかりだった。
ケーキは律が望まなかったからなし。
新しい家族で迎える誕生日、律はすごくうれしそうで、僕もうれしくなったんだけど、同時にソワソワもしていた。
僕はまだ律にプレゼントのスケッチブックを渡せていなかったのだ。
昼間に渡せる時間はいくらでもあったのに、結局勇気が出なくて。
夕食を兼ねた律の誕生日のお祝いが終わり、お風呂も済ませ、自室へと戻って来た僕はクローゼットからプレゼントのスケッチブックを取り出した。
しばらくプレゼントとにらめっこをしていたが、意を決して自室を出ると、律の部屋のドアをノックする。
「はい。誰?」
律は、いつもはノックをしたらいきなりドアを開けるのに今日は珍しく返事が返って来た。
「……僕」
「あー、ちょっと待って」
それからほんの少し間があり、ドアが開かれると、風呂を済ませ、パジャマ姿の律が顔を出した。
何度見ても湯上りの律は犯罪になるんじゃないかと思うくらいエロかっこいい。
僕が惚れ惚れと見惚れていると、律が首を傾げて笑う。
「何? またどこか勉強で分からないとこがあるの? それともオナニ」
「違うっ。……これ」
律の言葉の続きを慌てて遮ると、僕はドアの横に置いてあったプレゼントのスケッチブックを差し出した。
「え?」
「……誕生日のプレゼント」
視線を逸らしながら、僕が遠慮がちに言うと、
「えっ……?」
律が酷く驚いたような声を出した。
「俺に……?」
僕は相変わらず律と視線を合わぜないまま小さくうなずく。
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