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第33話 二人の誕生日が重なる瞬間に……

「……うれしい」  律の言葉に僕がおずおずと彼の方を見ると、端整な顔を思い切り綻ばせていた。  僕の方が恐縮してしまうくらいに。 「あ、あの、そんな大したものじゃないから」  僕は慌てて言ったが、律はますます笑みを深めた。 「包み、解いていい?」  その形や薄さからプレゼントがスケッチブックだということは大体予想がつくだろうに律は聞いて来る。 「うん……」  律は丁寧に包み紙を解き、現れた青いスケッチブックを見ると、僕を抱きしめて来た。 「おまえ、本当にどこまで可愛いんだよ」 「……律……」 「ありがとう、陽馬」 「ん……」  喜んでくれて良かった……。  律の腕に包まれたまま安堵する僕の体がふわりと宙に浮いた。 「えっ?」  気づいたときにはベッドに横たえられ律に伸し掛かられていた。 「ちょっ……律っ……」  僕はこの展開に慌てた。  だってまだ父さんも母さんも階下で起きているのだ。  なのに、律は。 「今、十一時か……あと一時間で陽馬の誕生日だな。俺の誕生日からおまえの誕生日になる瞬間を抱き合って過ごしたい」  本当に、どんな顔をしてこんな台詞を口にしてるのか。  律を見上げると、優しく微笑んでる薄茶色の瞳と目が合った。  こんな瞳で見つめられると、拒めないじゃないか。 「……で、でもまだ父さんと母さんが起き……んっ……」  最後まで言わせてもらえずキスされた。  僕の言葉を封じ込めたキスは徐々に深くなって行って、いとも簡単に僕を溺れさせてしまう。  ……律はいったい何人の女の子とキスをしたのだろうか?  痺れる頭の片隅でそんな思いが浮かび、心の深いところが悲しい音を響かせる。  僕はその音から逃れるため、律の背中に縋りついた。

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