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第42話 ごめんなさい
「昨夜は随分怒られたのか?」
翌日学校での昼休み、僕の前の席に座った学が聞いて来た。
「怒られたよ」
バナナオレを飲みながら答える僕に、学は苦笑する。
「道に迷っちゃったのは仕方ないとしても電話の一本もかけなかったのは流石にまずかったな」
「分かってるよ」
そのことについては母さんは勿論、父さんにも散々注意された。
「でもなんか意外だったな」
「何が?」
「佐藤律だよ。もっと冷めてるっていうか、あんなふうに激するタイプだとは思わなかった」
「…………」
学の言葉に僕はどう答えたらいいのか分からなかった。
「いいやつじゃん。佐藤律。その顔じゃまだ気まずいままなんだろ? 仲直りしろよ。陽馬を捜してきっと随分捜し回ったんだと思うぜ」
「そう、だね……」
息を切らして走って来てくれた律。
あまり汗をかかない彼がびしょ濡れになるくらいあちらこちらを捜して僕を見つけてくれた。
「仲直り、するよ」
片思いでもやっぱり僕は律が好きだから。
まだまだあきらめられそうにないから。
律に迷惑だけはかけないようにしながら。
律を好きでいよう。
夕方、僕が自宅へ帰ると、リビングにいた律と鉢合わせた。
無言ですれ違って行こうとする律のパーカーを僕はつかんで、勇気を出して言った。
「……昨夜は本当にごめんなさい、これからは絶対あんなことないようにするから、だから、もう……怒らないで」
本当は『嫌いにならないで』と言いたかったのだが、それを言う勇気はなくて。
しばらくの間のあと、律は答えてくれた。
「怒ってなんかないよ」
もうそれだけで充分だった。
僕はつかんでいた律のパーカーを離すと、そのまま階段を駆け上り自分の部屋へと逃げ込んだ。
律に恋をしてから僕の涙腺はすっかりダメになってしまったみたいで、また涙が溢れて来る。
部屋の中、ドアにもたれて泣いていると、ノックの音がした。
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