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第44話 僕の告白

「……なのに、俺は……」  苦しそうに掠れる律の声。 「……最初はただ可愛いって思ってただけなのに」 「律?」  律はいったい何を言いたいんだろう?  僕を抱きしめていた腕を緩めると律は視線を合わせて来た。  薄茶色の綺麗な瞳はなぜだろう、とても寂しそうで。 「どうしたの? 大丈夫? 律」  サラリとした感触の茶色の髪をそっと撫でると、律はより一層寂しそうな表情になる。 「俺なんかに優しくするな。じゃないと母さんを悲しませてしまう」 「……? どういう意味? 律の言ってることよくわかんないよ」  母さんを悲しませる? この『母さん』というのは現在の母さんということなのだろうけど……訳が分からなくて頭がこんがらがって来る。  困惑する僕に、律は困ったような微笑みを浮かべて見せた。 「鈍感だな、陽馬は。……まあ、そんなところも可愛いんだけど。でも、もうおしまいにしなきゃ」 「おしまい……?」 「陽馬、可愛い彼女作れよ。そうすればきっと母さんも喜ぶ」 「……!」  律が放った言葉に、僕の中で何かがキレた。  僕は律の体を突き飛ばし、叫んだ。 「さっきから母さん母さんって何なんだよ!? 散々僕のこと振り回して、律は僕の気持ちなんかちっとも分かってくれてないっ。鈍感なのは律の方じゃないか!」 「陽馬……?」  突然の僕の激昂に律が切れ長の目を見開いて驚いている。  人間、感情の許容量がオーバーすると、本音が駄々洩れになるらしい。 「僕は……僕は、律のことが好きなのに……!」  気づけば僕は律に告白をしていた。  ハッと気づいて口を両手で押さえるももう遅い。  律が呆気にとられたような表情で僕の方を見ていた。

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