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第46話 律の嫉妬

 なのに、律は真剣なまなざしで僕を見つめながら言葉を紡ぐ。 「言ってしまえば、おまえへの思いが暴走してしまいそうで怖かったんだ」 「…………」 「最初は反応が可愛いから手を出したけど、いつの間にか本気で好きになってた。怖いくらいにおまえのことしか見えなくなって行って。誕生日の夜、眠ってるおまえを見ているうちに、ああ、俺ヤバいなー、このままだと陽馬に溺れてしまうって思って。だから逃げ出したんだ。自分の気持ちからもおまえからも……ごめん」 「……信じない。だって律はたくさんの女の子と付き合ってるくせに」 「全ての女と手を切る。約束する」 「そんなこと信じられない……信じな」  僕の言葉は律の唇によって封じ込められた。 「んっん……」  律の胸を叩いて抵抗するも、徐々にその力は弱まり、律の……大好きな人のキスの甘さに酔わされてしまう。  腕の中でくったりと力を失った僕を、律は支えるように抱きしめながら囁く。 「それでも信じて。俺のこと」 「……っ……勝手だよ、律は。誕生日には帰って来てくれないし、母さんのために彼女作れって言ったかと思ったら、今度はす、好きだとか信じてとか。僕はいつも律に振り回されてばっかりで……!」 「ごめん……、でも俺、誰かをここまで好きになったの初めてだから、正直自分でもどうすればいいのか分からなくて、色々迷って……」  律がもどかしそうな口調で言い、更に言葉を重ねる。 「生まれて初めて嫉妬もした」 「……嫉妬?」 「昨夜、一緒にいたやつのことだよ。あんな場所であんな時間につるんでいるから、その、何かあるんじゃないかって、すげー嫉妬した」 「そんな……さっきも言ったように学は親友で、偶然あそこで鉢合わせただけで……」 「ほんとに?」  律が僕の瞳を覗き込むようにして聞いて来る。  薄茶色の瞳はまだ不安そうだ。  律が僕のことで学に嫉妬したなんて、にわかには信じられない話だったが、誤解されたままなのは嫌だった。

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