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第48話 そして……

「何だよ? 陽馬。人が真剣に告ってるのに」  律がムッとする、その表情がなんだか可愛い。 「だって、律、本当に鈍感なんだもん」 「何がだよ?」 「……気が付かなかった? ……僕、女の子には興味持てないんだよ」  僕は母さんにも言えず、ずっと心に隠していた秘密を初めて打ち明けた……結構勇気がいったけど。  律はポカンとした顔になりながら聞いて来る。 「って、陽馬。本当に?」 「……うん……」 「何だよ。じゃ、俺が母さんのためにおまえのこと諦めて真っ当な道へと戻してやろうと思ったのは全くの見当外れだったって言うことかよ……」  律は低く呻いたあと、僕の髪の毛をワシャワシャと乱した。 「そういう重要なことはもっと早く言えよ」 「だって、律に嫌われたくなかったから」 「あ? 嫌う? 何で?」 「何でって……気持ち悪いとか思われそうで」 「おまえって本当変なとこ天然だよな。陽馬のことそんなふうに思うくらいなら手なんて出さないよ。……でも、それはそれで心配だな」  律が急に真面目な顔になって悩みだす。 「律?」 「女に盗られる心配はなくなったけど、男に盗られる心配がさ」 「そんな心配いらないよ。僕はこんなだから全くモテないし」 「陽馬は可愛いよ」 「でも律だって最初は僕のこと馬鹿にしてたでしょ? 垢ぬけないやつだって」  初めて会ったとき、軽く笑われたことを思い出し、いじけた気持ちで言うと、返って来たのは思ってもみなかった言葉。 「え? 俺そんなこと思ったことないよ。最初から可愛いやつだなって思ってたし。まだね、おまえは原石だけど、そういうところがたまらなくそそられる」  初対面の時、馬鹿にされたように笑われたと感じたのは、どうやら僕の被害妄想だったみたいだ。 「律……」  うっとりと律の端整な顔を見上げていると、眼鏡を外された。  眼鏡無しでも充分にその整った顔立ちが見える距離まで近づいて来て、そっと唇が重ねられる。  同時に律の手作りのシャツの裾から入りこんで来る少しひんやりした手。  律の手が素肌を撫でて行く。しばらく忘れていたその感触に、僕は過剰に反応してしまう。 「あっ……律……」 「陽馬……可愛い……たまらない……」  そのまま僕たちは久しぶりの情交にのめり込んで行った。

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