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第51話 律の決意

 結局明け方近くまで僕と律は起きていた。  二人とも思いが通じ合ったことの嬉しさで気持ちが高揚しなかなか眠気が起きなかったのだ。  遠くの方で早起きの小鳥たちが囀り始めた頃、僕は急に眠たくなって来た。  このまま律と一緒のベッドにいてはいけない、自分の部屋へ戻らなきゃと思いながらも睡魔に勝てずに眠ってしまった。 「おやすみ、陽馬……」  これ以上はないくらい優しく、甘い声を聞きながら。    起こされたのもまた同じ声でだった。 「……馬、陽馬。そろそろ起きないと学校遅刻しちゃうぞ?」 「……ん……うん…………って、律?」  途端に目が覚めた。  僕はまだ律の部屋で律のベッドで律の腕枕で眠っている。 「おはよ、陽馬」  心臓に来るくらい端整な顔立ちがにっこりと笑いかけて来る。 「りりりりり律っ?」 「またまた可愛い反応しちゃって。朝からヤりたくなるだろ」 「そ、そんなこと言ってる場合じゃないだろ? も、もし母さんが起こしにでも来たらどうするんだよっ……?」  時計を見るともう七時を過ぎている。  基本的に母さんは僕たちの自立に任せてるから部屋へと起こしに来ることはないのだが、それでも万が一ということがある。  僕があわあわしていると、薄茶色の瞳を微笑ませて律が宣言する。 「構わないよ」 「え? だ、だってこんなところを見られたら何の言い訳もできない……」 「俺は別に言い訳なんかしようとは思っていないよ。もし見られたらはっきり言うよ。陽馬が欲しいって。だってどっちにしろいつかは言う日が来るんだ」 「え……?」 「母さんを悲しませることになっちゃうかもしれないけど、でも陽馬のこと幸せにしたらきっと許してくれると思うから」 「律……」  律の瞳には揺るぎない光が宿っていて、彼が本気で決意してくれていることが分かった。 「ありがとう……」  僕が半分泣きながらそう言うと、 「ほら、そんな顔しないの。早く起きないと学校に遅刻するぞ」  律は照れていることを隠すかのように勢いよく体を起こした。

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