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第53話 親友からの言葉

「おはよ、陽馬。なんかいいことあった?」  僕が教室へ入ると、既に来ていた学が話しかけて来た。 「え? う、ううん。べ、別に」 「その様子だと佐藤律と仲直りできたみたいだな」 「え!? あ、う、うん……」  なんでか僕は少し焦ってしまった。  学は僕と律の本当の関係など当たり前だが全く知らず、ただ単に家族として僕たちがうまくいってないことを心配してくれているだけなのに。  落ち着け僕。  あんまり焦ったりうろたえたりしているところを見られたら変に思われちゃう。 「な、仲直りできたよ。心配かけてごめんね、学」 「なんの。両想いになれて良かったよなー、ほんと」  学のこのセリフに僕はまた慌てる羽目になった。 「りりり両想い……!?」 「? さっきから陽馬、何赤くなってんだ? 佐藤律と家族としての絆ができたんだろ? これ以上はない両想いじゃねーか」 「…………そ、そうだね」  例えが洒落になってないよ、学……なんて僕は脱力してしまった。  そんな僕を見て学は尚も楽しそうに言葉を続ける。 「それと彼女ともうまく行ってるのか? 陽馬」 「……? 彼女?」  ちょっと何言ってるか分からない。 「彼女がいるのは学だろ?」 「陽馬も前に彼女ができたみたいなこと言ってたじゃないか」  学の言葉に僕は首を傾げた。 「え? そんなこと言ったっけ?」  なんだか僕と学との間に大きな誤解があるみたい。  きょとんとする僕に学は急にバツの悪そうな表情になると少し早口で言った。 「も、もう別れちゃったのか……。ま、まあ、ほら、あれだ。そ、そう。女の子なら佐藤律に紹介して貰えばいい話で」 「そんなのやだ!」  思いのほか強い口調になってしまった僕。  だって律は全ての女の子ときれいさっぱり手を切るって言ってくれたんだから。  もう律と女の子……言葉の上だけでも一緒に並べるのは嫌だったんだ。  僕ってすっごく嫉妬深いってこと初めて知った。  僕の激しい嫉妬の感情なんて勿論学は知る由もなく。 「……そうだよな。やっぱ抵抗あるかー。悪い。そだな、今度俺の彼女の友達とか呼んで合コンでもしようか。でも、俺たち高校生だから酒なしのジュース合コンになるけど。うーん、なんかあんまり盛り上がりそうにないなー」  腕を組んで唸る学に対して、 「遠慮しとくよ、学」  僕は噛み合ってない(学は気づいてないけど)会話に終止符を打った。

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