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第71話 律の高校の文化祭

 文化祭実行委員という腕章をつけた生徒にチケットを見せて、ドキドキしながらG校の門をくぐる。  まず見渡したグラウンドには舞台が組み立てられている。  ここで何かの催し物でも行われるのだろうか。  あとはたくさんの屋台が出ていて、生徒たちが群がっている。  文化祭だからというだけでなく、やはり共学ということでか僕の通うN校とはかなり雰囲気が違う。  きょろきょろしながらグラウンドを横切り校舎の中へと入ると、僕は入り口でもらった校内の見取り図とどのクラスが何をしているのかを書いてある紙を広げた。  えっと三年一組の律の教室は……ああ、あの校舎の二階の一番左橋だ。  校舎内に入り、僕が律のクラスの教室へと向かっていると、擦れ違う女子生徒たちが口々に騒ぎ立てている。 「ねーねー、律くん、ちょーかっこよかったね!」 「うん! あたし、あと三回は一組の茶店に行くつもり」  ああ……やっぱり僕が予想した通り律目当ての女の子が集まっている……。  席空いてるかなぁ?  僕が漠然とした不安を抱えながら階段を上っていると、G校の二人の女子生徒たちがおしゃべりをしながら降りて来た。 「ね、ところでさ、今年のあれ。また律くんよね?」  律の名前が聞こえて来たので、僕はドキッとした。 「そりゃ律くん以外いないでしょ」  ……? 一体何の話だろ?  僕が首を傾げているとその女子生徒たちは尚も話を続ける。 「男子の方は去年も一昨年も律くんがダントツだったけど、女子の方は毎年荒れるから分かんないね」 「ねー。ま、ぶっちゃけ女子は誰がなろうとどうでもいいけどね」 「言えてるー」  女子生徒たちがきゃぴきゃぴと僕の横を通り抜けていく。  ……いったい何の話だろ?  彼女たちの話の詳細が気になったが、「何の話?」なんて聞けるわけもなく。  僕は階段を上り切り二階に着くと一組の教室へと行った。  律のクラスの喫茶店は超満員だった。  女の子が教室からはみ出して行列を作ってる。  女の子たちはG校の子もいたし、G校以外の制服を着た子も私服の子もいた。  これってもしかしなくても律目当てのお客さん、だよね……?  席が空いてるとかどうとかの問題じゃなくこれじゃ中に入ることもできない。  仕方なく僕は女の子の行列の隙間から教室の中を覗いてみた。  満員御礼の教室の中でも、やはり律の姿はすぐに見つけられる。  律は白いシャツに黒いベストにズボン、蝶ネクタイ姿で、忙しく動き回っていた。  なんてことはないシンプルなウエイターの衣装だったが、それがひどく似合っていてかっこよくて、僕は見惚れてしまった。  僕が凝視していると、律は視線に気づいたのかこちらを見た。  目と目が合う。 「陽馬!」  律がクリームソーダの乗ったトレイを片手に持ちながら満面の笑みとともにぶんぶんと僕に手を振る。  その途端、喫茶店を模した教室内のお客の女の子も並んでいた女の子も一斉に僕の方を見た。  以前の本屋のときと同じだ。  それこそ貫通するくらい見られて冷や汗をかく。  もし僕が律までとは言わずとも、それなりのイケメンだったならきっとこんなにも奇異なものを見るような目で見られなかったと思う。  でも僕は冴えない陰キャだから、あからさまに不可解な視線を送られてしまう。  いつまで経っても慣れないんだよなー、この、「なんでおまえなんかが律の友達なんだ?」っていう視線。  なのに律はそんなものおかまいなしに、持っていたクリームソーダをお客の前に置くと急いで僕の元へとやって来た。

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