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第83話 罪悪感

「陽馬はK大に受かる自信あるんだね?」 「うん、絶対に受かって見せる」 「本当に?」 「本当に」 「頑張って、期待してるよ」  父さんがわしゃわしゃと僕の髪を乱しながら笑みを見せてくれる。 「あ、あの、じゃじゃあ律は……」 「好きにさせるよ。私も律がバイト三昧で体を壊しそうで心配だったし。なにより陽馬にそこまで言われたらね、折れない親はいないよ、きっと」 「ありがとう! 父さん」  僕は飛び上がらんばかりに喜んだ。  それこそ父さんに抱きついてしまいそうなほど。 「それは私のセリフだよ。ありがとう、陽馬、律のことをそこまで思ってくれて。……私はどこかで君に遠慮してる部分があったけど、君と律はとっくに立派な家族になっていたんだね」  満面の笑みとともに紡ぎだされた父さんの言葉。  うれしいはずのそれはしかし、僕の心に痛みをもたらした。  ……家族、か。  確かに律は僕にとって大切な家族だ。でもそれと同時に大切な恋人でもある。  父さんが僕と律の本当の関係を知ったら、どうなってしまうんだろう。  家族の絆は粉々に砕け散ってしまうのが必至だろう。 「どうした? 陽馬?」 「……ううん。なんでもない」 「もう夜も遅いから早く休みなさい。律が帰って来たら、私の方から話をするから。陽馬はもうなんにも心配することないから」 「うん……」  父さんがもう一度僕の頭を優しく撫でてくれる。  父さんと僕、親子としての絆が強くなればなるほど、律との関係への罪悪感が大きくなっていく。  痛みが段々大きくなっていくのを封じ込めて僕は笑う。 「おやすみなさい、父さん」  父さんの部屋を出ようと扉を開けると、廊下に律が立っていた。

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