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第85話 メロメロ

 母さんも心配してるから話をしてくるという父さんと一緒に書斎を出ると、僕たちは律の部屋へと行った。  後ろで扉がしまると律は再び僕を強く抱きしめる。  二人きりになれたので、僕も素直に律に身を任せた。 「……律、これからはバイトやめるか、減らすかしてよ? 体壊してしまいそうですごく心配だったんだから」  とりあえずずっと気になっていたことを伝えると、律は僕の髪に顔を埋めながら答える。 「ああ、分かってる。正直学校と複数のバイトの掛け持ちはきつかったから、デザインの勉強する時間さえ持てないでいたし」 「ちゃんと眠って、デザインの勉強も頑張って」 「うん」 「……父さんね、律の作ったこの服見てすごく驚いてた。きっと僕のおかげとかじゃなく、律の才能に気づいたから律の夢に賛成してくれたんだよ」 「っていうか、陽馬が着ていたからその服の魅力を分かってくれたって感じかな。父さんも俺と同じで陽馬の可愛さにメロメロなんだ」  また律の僕に対する過大評価が始まったと呆れていると、彼がとんでもないことを口走った。 「父さんがライバルになったらどうしよう」 「な!? なに言って!?」 「俺と父さんの血は陽馬に弱いふうにできてるから」  冗談で言ってるのかと思えば、結構真剣な表情をしている。 「バ、バカじゃないの!?」 「俺、相手が父さんでも絶対に引かないから」  呆れたことを言って来る律の頬を僕は軽くひねってやった。  まったく、もう。

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