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第87話 不安不安不安

 また二人きりになると、律は何もかも見透かしたような瞳で僕を見て来た。 「陽馬、何不安になってる?」 「不安になんか……」 「なってるだろ。俺たちのことが父さんや母さんにばれたらどうしようって考えてる」  図星、律は勘が鋭い。 「陽馬、俺、前に言ったよな。いつでも陽馬とのこと話す決心あるって。分かってるだろうどあれ今でも変わってないから。っていうか俺は一生涯おまえと一緒にいる……絶対に離さない。誰が反対しても。覚悟しろよ」 「律……」  律の目は怖いくらい真剣で、僕を射抜いている。 「それは僕も同じだよ」  初めて好きになった、こんなにもこんなにも愛しい人。  男として情けないと笑われようが律がいなければもう僕は生きていけない。 「ほんとに? 陽馬」 「本当……ただ、ね」 「ただ、何?」 「このままずっと父さんと母さんと律と僕、家族全員で仲良くしていければって、ちょっぴり思う」 「それは無理だよ」  律がぴしゃりと言う。 「いつか『その瞬間』は絶対にやって来る。否応なしにばれるか、自分たちから話すかの違いはあっても。まあ、俺としては自分から正々堂々と話したいけどね」 「うん、そうだね……」  ああ……だめだな、僕は。  ちょっとしたことですぐに気持ちが揺らいでしまう。  このヘタレと言うか臆病者と言うか、の陰キャどうにかなんないかな。  律はこんなに一途にカミングアウトも辞さないと言ってくれるのに。  それに律の夢を家族全員で応援すると決まったばかりだっていうのに、僕は水を差すようなことばかり。 「ごめんね、今夜は律が夢を追うこと、父さんが許してくれた嬉しい夜だったのに……僕……」  しゅんとうなだれて僕が謝ると、律は射るように鋭かった目を少し緩めた。 「怖くなっちゃった? 陽馬」 「そんなんじゃなくて……ううん、やっぱりそうなのかな。なんかね、さっき父さんと話してて親子の繋がりが深くなった気がしてさ、すごく嬉しくて。その上に母さんもあんなに喜んでたし。僕たちはお互いに血が繋がってないけど、そういうのを超えて本当の家族になれたみたいな気がして。僕たちの関係が知られたら、それが全て壊れてしまうんだとか思っちゃって……うん、やっぱり怖かったんだ。ごめんなさい」  僕が一気に話すと律は一瞬の間のあとぽつりと零した。 「妬ける」

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