90 / 137

第90話 このまま

 律は部屋の中に入るとゆっくり僕をベッドへ降ろした。 「今夜はこっちの部屋……陽馬の香りがしみついた部屋でしたい」 「…………」  本当にいつも思うことだけど、どうしてドラマか、少女漫画(ほとんど読んだことないけど)の中のようなセリフが言えるんだろう。  いや、今時こんなセリフ、フィクションの中でもないかもしれない。  けど、律が言うと完璧に決まってしまうからすごい。  そんなことをまだ快感一色には染まっていない頭の片隅で考える。  そして不意に頭に浮かんだ言葉を僕は口にしてみる。 「僕の香りを律の体にあげる……」  言った途端激しい後悔。顔が真っ赤に染まってるのが分かる。  律が口にすればかっこよくて決まるセリフも、僕が言えば二昔前のドラマのようだった。しかし、律にとっては違ったようで。 「……陽馬……可愛い……!」  狼の耳と尻尾でも生えたかのように僕に飛びかかって来た。 「わっ……律、ちょっ、待って……!」 「だめ。陽馬が可愛すぎるのが悪い」  僕のズボンと下着をどんどん取り去っていく律。  なのに、上に着ている律デザインのシャツには手をつけない。  上着だけ身に着け、下半身には何も着ていない状態はある意味全裸より恥ずかしい気がする。 「律……」  顔から火が出そうな思いで恋人の名前を呟くと、彼は妖しく笑った。 「今夜はこのままでしよう……なんだかちょっと変態ちっく?」  そんなことを言うと、服の上から僕の乳首に吸い付いた。

ともだちにシェアしよう!