「……欲しいんだ？　陽馬は俺のこれが大好きだからね……」 　耳元で妖しく囁かれ鼓膜さえ犯される。 「り…………社長……」 　片足を持ち上げられ、律の雄がずぶりと音を立てながらゆっくりと挿入される。 「あっ、ああ、あ、あ、あ」 　ぼくは声が響かないように両手で唇を抑えていたが、それでも激しすぎる快感に耐え切れず指の間から零れ落ちる。 　律が優しい所作で僕の手を唇から離すとキスで声を抑えてくれる。 「っ……ふ……う……」 　舌と舌を絡ませながら、律が前立腺を何度も強く突いて来る。 　気持ちよすぎてもう何が何だか分からない。 　律が僕の脚を自分の腰に絡みつける。より結合が深くなる。 　そのまま深く突かれ僕の性器から精液が飛び散り、お腹の中が律でいっぱい。 　僕のシャツと律の制服のシャツを濡らす。 「っ……ぁ……」 　キスで塞がれた唇から甘い吐息が零れ落ちる。 　ふっと薄く目を開けると、律の綺麗な薄茶色の瞳と目が合った。 　律は動きをとめ、煌めく糸を残しながら唇を離し、微笑んだ。 「……眼鏡したままだとキス、しにくいな」 　そんなふうに言いながらも眼鏡を外してくれる気はなさそうだ。 　僕は律の中にまだどこか冷静な部分が残ってることが不満だった。 　僕は律との行為に夢中で少しの余裕もないというのに。 　だから自分から律の方へと手を伸ばして彼の首筋に抱きつき、耳元へ消え入りそうな声で囁いた。 「……もっと、して」 　自分の方から行為を求めるのはいつだって恥ずかしい。 　きっと今の僕は首筋まで真っ赤になっていることだろう。 　拙い僕の誘い。 　でも律の中から冷静な部分が消えて行くのが分かる。 「陽馬……」 　もう一度深いキスをくれると、律はより激しく動き出した。 　下から垂直に突かれる体位になり僕は何度も射精した……いや、もう精液なんて出尽くして、それでも体は絶頂を迎え続けていたような気がする。 「……ん……ん……っ……」 　律のキスに吸い込まれる快楽の声。 　さっきよりも激しく腰を進める律。 　今度こそ二人限りなく一つになりながら我を忘れて行く。 　体の奥深いところがジワリと熱くなり、律がイッた。 　律の熱を最奥に感じた瞬間、僕もまた体を痙攣させて高みへと昇りつめた。 　立ってられなくて、ガクンと腰から崩れ落ちそうになる僕を律が抱き上げてくれ、ベッドまで連れて行ってくれた。 　体をきれいにしてくれ、パジャマを着せてくれ、本当にいたれりつくせりだ。 「ありがとう、律」 　僕がお礼を言うと、律は人差し指を自分の口に当ていたずらっぽく笑う。 「『社長』でしょ？」 「も、もう……」 　まだごっこ遊びを続けているつもりの律に僕が抗議すると、彼は笑みをますます深めた。 「こういうのもたまにはいいだろ？」 「し、知らないよっ」 「何言ってんだよ、陽馬だって楽しんでたくせに。……そうだ、今度はナースと医者っていうシチュエーションでしてみようか」 「……っ」 　心底楽しそうに言ってのける律に僕は力の入らない腕で枕を投げつけたのだった。