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第94話 桜、咲いて
絶対誰にもばれたらいけない時間を重ねつつ勉強も頑張る日々が過ぎて行く。
そうして僕と律は春四月、無事に桜を咲かせることができた。
進学したからと言って何が変わるわけじゃない。
僕たちは相変わらず愛し愛される日々を過ごしている。
専門学校へ行きだしてから律はまたバイトを始めた。
勿論何個も掛け持ちすることはなく自宅近くのコンビニで働いている。
「二人の結婚資金のため」なんて真顔で言われて、恥ずかしかったとともにとてもうれしかった。
だから僕もまたその「結婚」のために協力をしたくなり、律と同じコンビニでバイトをしたいと申し出たのだが、律はNGを出す。
「どうしてさ?」
納得いかなくて僕が詰め寄ると、律は剣呑な表情で答えた。
「一緒のコンビニで働くと言っても、いつも同じシフトに入れるってわけじゃないし、陽馬が深夜のシフトになんか入るの危なくてやだ」
「でもっ……」
「陽馬は大学の勉強を頑張ってて」
「律だってデザインの勉強があるじゃないか。二人で働いた方が、そのけ、結婚資金も早くたまるし」
大切に守られるのは心地いいけど、でも僕だって男だから過保護にされるのは嫌だ。
何より二人のためのお金なのだ、僕だって力になりたい。
僕の言葉に律は一瞬の間のあと破顔し、抱きしめてくれる。
「可愛い……陽馬。うん。分かった、二人で結婚資金ためよ。おまえのバイトは俺が探して来るから」
「うん……」
抱きしめられた腕の中、僕は幸せを噛みしめながらうなずいた。
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