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第100話 親友の理解

 不意に隣に立っていた親友がポツリと呟いた。 「なんか、陽馬の周り、にわかに賑やかになって来たな。これも佐藤律効果ってやつなのかな」 「ちょっと学、律とあんな奴一緒にしないでよ」  僕が心外で学に向かって抗議すると、親友はにやりと笑った。 「分かってるよ。佐藤律は一見軽いけどしっかりしてるっぽいけど、さっきの野郎はいかにも空っぽって感じだったもんな」 「うん……」 「俺が言いたいのはさ、佐藤律と親しくなる前の陽馬だったら、あんなパリピ男が近づいて来ることなんて絶対なかっただろうなってこと。そういう意味では佐藤律は陽馬の人生をすごく変えた特別な人間なんだなってこと」 「…………」  学の言うことは凄く的を得ていたが、なんだかその口調に意味深なものを感じて彼をじっと見てしまった。 「そんなに見るなよ。陽馬と親し気にしているとこ佐藤律に見られたら、俺殺されちまうかも」 「……えっ……!?」 「付き合ってるんだろ? 佐藤律と」 「……っ……」  心臓が飛び出るほど驚くとはまさにこのことだと実感した。ばれてた? 僕と律のこと、学に。 「なっ、何言って」  それでも一応は知らを切ろうとしたが、無駄だった。 「もう完全ばれてるからとぼけなくていいよ。それに他の誰にも……勿論彼女にも言ってないし……安心していいから」 「……いっいいいいつから」 「気づいてたのかって? そうだな、G校の文化祭で佐藤律がおまえに告ったって噂を聞いた時くらいからかな。あいつは周りの奴らが言うような冗談でそんなことできる奴じゃないって俺は思ってたし。それになんて言っても――」  そこで学はいったん言葉をとめてから、また続ける。 「陽馬が佐藤律の話をするときのとろけそうな甘い顔見てたらさ、一目瞭然だった。どう見ても恋する乙女そのものだったから」 「……き、気持ち悪くなかったの? 学は。 僕と律がその、そう言う関係だって気づいて」 「まあ、ちょっとだけ戸惑ったけど。嫌悪感とかはなかったよ? 真剣なんだなって伝わって来たしね。それに陽馬は俺の大切な親友だから、気持ち悪いなんて思ったりしないよ。……、まあ、俺のことが好きとか言われたら流石に少し困ってたかもしんないけどね」  学は一転の曇りもない笑顔で言ってくれた。  僕と律の関係を手放しで応援してくれる味方、学の存在は僕にとって本当にありがたく頼もしかった。

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