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第101話 vs
学という力強い理解者を得て、僕が晴れやかな気持ちでバイトの仕事をしていると、ドアノブが鳴り、あまり会いたくない人物が入って来た。
派手な髪、たくさんのピアス、だらしないんだかお洒落なのか判断に困る服装。
確か名前は……永井なんちゃらだっけ。
「ちーす、また来たよー、佐藤ちゃん」
「……いらっしゃいませ」
「またまたー、愛想悪いんだからぁ。スマイルスマイル、ね、陽ちゃん」
は、陽ちゃん?
どうしてここまで急に親し気にしてくるのだろう……?
パリピにはついていけない。
「ご、ご注文は?」
「んー?ブレンドー」
「か、かしこまりました」
もうこれ以上関わっていられないとマスターの方へ逃げるように行った。
けれど敵もしつこく。
「ねー、陽ちゃんちょっとー」
席から僕を呼びつける。
渋々僕が永井のところへ行くと、いやらしい笑みを浮かべた彼が聞いて来る。
「陽ちゃんてさー、佐藤律とどこまで行ってんの?」
「は? どこまで?」
一瞬意味が分からずぽかんとなり、次の瞬間意味が分かり真っ赤になる。
「お、これは最後までしてる反応かな。陽ちゃん、奥手そうな顔してススんでるんだぁー」
「なっ、何をっ……」
これはいくらお客さんでもセクハラ発言になるんじゃないか?
僕が睨みつけても永井は際どい発言をやめようとしない。
「俺も陽ちゃんとしたいな。ね、一回させてくんない?」
「やめてください……!」
「あっ、その顔可愛いー、陽ちゃん、嫌がる顔色っぽいねー」
そのとき、からんからんと軽い音を立てドアが開き、人が入って来たのだが、僕は永井がやなことばかり言ってくるので、下を向いて唇を噛みしめていたから気が付かなかった。
マスターは厨房の奥におり、何人かいた常連客はおしゃべりや読書に夢中で新しく入って来た客に関心など示さない。
そのお客は僕が無理やり相手をさせられている永井のテーブルの方へと歩いて来た。
そしてバンッと思い切りテーブルが叩かれる。
店中の人間の目がお客に集まりその美貌に釘付けにされる。
「律……!?」
入って来た美貌のお客は律だった。
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