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第105話 だめ……
いくらカミングアウトする覚悟ができているとはいっても、シテいる真最中を見られるのは当たり前だが嫌だ。
涙目でパニックになる僕。
でも律はそんな僕とは対照的にこんな時だと言うのに冷静さを崩さない。
パニくる僕をなだめるように優しく髪を撫でてくれると、『しーっ』というように人差し指を唇に当てた。
「律くん? 陽くん?」
その声の近さから母さんが僕たちの部屋へたどり着くにはあと階段二、三段といったところか。
「りっ、律……」
僕たちは全裸で抱き合い、僕のあそこには律の雄が深々と挿入されている状態だ。
母さんが扉の前に立った気配がした。
どうしよう。どうしよう。どうしよう。
瞳で縋れば、律の大きな手が僕の口を覆い、律がゆったりと口を開いた。
「何? 母さん、今、陽馬に勉強教えてるんだけど」
「あら、そうなの? じゃおやつでも持ってこようか?」
「いらない。今、大切なところやってるし。陽馬も集中してるから。勉強終わったら降りて行くよ」
「分かったわ」
律の言葉に母さんは部屋の扉を開けることなく階段を降りて行った。
「もう大丈夫だよ」
律は言うと僕の口を覆っていた手をどける。
「はぁぁ……」
僕は思い切り息を吐き出した。
一時はどうなることかと思ったし、生きた心地がしなかった。
「ギリギリセーフだったな」
なのに律はそのセリフとは裏腹にのんびりとした口調だ。
どうしてそんなに冷静でいられるんだろう、まったくすごく肝が据わっているというか。
その上律は続けて信じられないことを言った。
「じゃ続きしよっか」
「えっ? つ、続きって……」
「だって、俺もおまえもまだイッてないし」
そ、そりゃそうだけど。僕の中にいる律はまだ大きいままだけど。
でも……。
「あー。陽馬、見事に萎えちゃってるな。そんなにビビったんだ?」
「……っ……そりゃ当たり前だろ!?か、母さんに見られるところだったんだから。つ、続きなんかできないよっ」
僕が真っ赤になって抗議すると、律は不敵に笑った。
「どうかな……?」
そして律の手が僕の性器を淫らに擦り上げる。
「あっ……やだっ……律……」
僕の弱いところを知り尽くした手に、巧みなその動きに僕の性器は瞬く間に勃起していく。
「ほら……。陽馬の体のことなら俺が一番知ってる。おまえをこんなに淫らにしたのは俺なんだから」
そして律がゆっくりと動き出す。
「うっ……あ…………り、つ」
律に与えられる快楽はまるで麻薬か何かのように僕を酔わせてしまう。
こんなことしてたらいけないのに。
またいつ母さんが上がって来るか分からない。
そりゃ今までだって何回も母さんたちが階下にいるときにシテたことはあるし、そのことに背徳的なスリルを感じてしまったりしたこともある。
けど今は違う。母さんが扉一枚を隔てただけで話しかけて来たのだ。
たった扉一枚。
あの扉が開かれていたらどうなっていたか考えると、とても怖い。
それにもしかしたらまた母さんが戻って来て扉を開けるかもしれない。
だから、こんなこと早くやめなきゃいけないのに、律の愛撫に僕の体はどんどん昂ぶっていくばかりだ。
「陽馬……ここ、好きだろ?」
耳元で囁かれる甘い声に僕の体がぞくりと震える。
「ああっ……やめて、律……も、やめ……」
「愛してるよ……陽馬……」
大きく腰を揺すられ僕は耐え切れずお腹の辺りに白濁とした液体を飛び散らせる。
そしてそのすぐ後に律が僕の中で絶頂を迎えた。
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