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第107話 意味不明
律のように強い覚悟を持てない情けなさと、あれだけ律が言ってくれたのにまだ消えない父さん母さんへの罪悪感。
二つの思いに悩みながらキャンパスを歩いていると突然後ろから抱きつかれた。
「はーるちゃん」
「っ? ……永井!?」
いきなりのパーティ男の登場に、僕は慌ててそいつの体を突き飛ばす。
「いてて……ひっどいなー。そんなに邪険にしなくても。今日は親友くんは?」
「…………」
「ねーってば、無視しないでよー。陽ちゃんてば」
僕が永井を相手しないでさっさと歩きだしても、しつこく聞いて来て後ろからついて来る。
しかたなく僕は溜息をつくと必要最小限の言葉で対応した。
「講義、受けてる」
「じゃ陽ちゃんは? 俺と同じでさぼりかな?」
一緒にするな!
「休講!」
僕が気分を害しても、永井は気にすることなくへらぁと笑っている。
「それじゃ暇してるんだ? なあ、カフェでお茶でもしない? 奢るから」
「…………」
僕は答えずに永井から遠ざかるため足を速めた。
しかし悔しきかな、永井の方が背が高く足も長いためすぐに追いつかれピッタリ横に並ばれる。
「俺、陽ちゃんのこともっともっと知りたいんだ。趣味とか好きな食べ物とか」
「そんなこと君には関係ないだろ」
一体どうしてバリバリのパリピの永井がこんな僕なんかに構ってくるんだろう?
何か得することでもある?
そこまで考えて僕は凄く嫌な可能性にぶち当たった。
永井は律のことが好きなんじゃないだろうか?
だから律に近づくために僕に親しくしてくるのでは……?
本当に不快でたまらないけど、こんなに僕に付きまとってくる理由なんてそれしか浮かばない。
「陽ちゃん、何考えてるんだ? 超怖い顔しちゃって」
「…………」
律が永井のことを好きになるわけないって信じてはいても、心は嫌にざわついてしまう。
「……陽ちゃん、俺、陽ちゃんにお願いがあるんだけど」
永井のその言葉にドキッとする。律との仲を取り持てとか言われるんじゃないかって本気で心配した。
「…………何?」
しかし次に永井の口から出た言葉は意外なものだった。
「友達になってください」
「えっ……?」
僕が絶句して永井の方を見ると、彼は相変わらずにへらと笑っていた。
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