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第118話 ラブホテルにて2
まるで赤ちゃんが母親のおっぱいを求めるかのように律は僕の体にむしゃぶりついて来た。
ジャケットを脱がされ、永井に引き裂かれたシャツを律が荒々しくむしり取っていく。
あっという間に全裸にされ、律もまた服を脱ぐ。
いつもながら律はすごく綺麗だ。顔は勿論だけど体もどこもかしこも。
何回体を重ねても見惚れてしまう。
僕がぼーっと律を見つめていると、律は強く僕のことを抱きしめた。
「律?」
「……ごめんな、陽馬」
「え?」
律が何を謝っているのか分からずきょとんとする僕に、律の顔が苦し気に歪む。
「永井に襲われそうになった時、傍にいて守ってあげられなくて」
「そんなの! 不可抗力だよ。それに律だって……修羅場だったじゃん」
律に追いすがる律子さんの声が頭の中で再生され、不快になる。
そんな僕の心を読んだかのように、律が額に優しいキスをくれる。
「俺には陽馬だけだよ。誰が何を言って来ても絶対に揺るがない」
「僕も律だけ。……っていうか、僕のことなんか好きって言ってくれるの律だけだよ?」
本当に律のような完璧な男性が僕なんかを好きになってくれるなんて夢みたいなことだよね。
「そんなことないよ。その証拠に永井がいたじゃないか」
これ以上はないくらい不愉快そうな顔をして律が吐き捨てる。
「あれは律と張り合いたくて僕をダシにしただけだから」
「違うよ、あの野郎は陽馬のこと好きだよ。俺には分かる。俺のことを出して来たことこそ負け惜しみだよ。だから、これからは一人っきりでひと気のないところへ行かないでくれ」
「うん、分かった」
相変わらず律の僕に対する評価は高すぎるなーと思いながらも、僕は素直にうなずき、
「律も律子さんは勿論他の女の子とも二人きりになんかならないでね」
僕の方も律にお願いをした。
「分かってる」
おでことおでこを合わせ、小指を絡ませて僕たちはお互いを独占する約束をした。
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