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第120話 ラブホテルにて4

   事後。  激しいセックスの所為でぐったりしている僕を律は腕枕してくれていた。  甘い恋人同士の時間。  けど、僕はなんだかモヤモヤしたものを心に抱えていた。 「……ねー律」 「何?」  僕の髪に触れる優しい手、甘く微笑む綺麗な顔立ち。誰もが魅了される存在。 「……律って、その、初めて?」 「は?」  僕の問いかけに律は一瞬驚き、そして気まずそうな表情になった。 「……ごめん、陽馬。俺も過去に戻ってやり直したいけど、ラブホに来るのは流石に初めてじゃない」 「あ、そうじゃなくって……」  律が今までたくさんの女の子と付き合って来たのは知ってるし、ラブホテルの経験だって嫌って程ありそうなのは今日のチェックインやらもろもろの所作から分かった。  まあ、それはそれで面白くはないんだけど、今僕の気持ちをモヤモヤさせているのは……。 「陽馬?」 「…………律って、もしかして僕よりも前に男の人としたことあるの?」 「へっ?」  律は間抜けな声を出したけど、僕は真剣に悩んでる。 だって僕の……同性の性器をあんなふうに口に含んで気持ち良くしたり、そ、挿入してからだって、ぐいぐい攻めて来て、気絶しそうなほどに快楽を与えてくれて。  そんな律の様子から、もしかして同性とのセックスも律は僕以前に既に経験済みなんじゃないかって思ってしまって、もやもやしてるんだ。  律は怒ったような悲しそうな複雑な表情になった。 「なんでそんなこと言うんだよ? 陽馬。男となんておまえが初めてに決まってるだろ? 以前にも言ったことなかったっけ?」 「ほんとに?」 「俺のこと信じられないの?」 「じゃ、なんで、あんなに上手いの?」 「…………」  律は僕のことを凝視してから、ゆっくりと口を開く。 「陽馬って、まれに大胆なこと言うことあるよな。天然っぽいっていうか……」  そして腕枕を外すと、僕の顔を両手で挟み込んだ。 「……そんなの陽馬だから……誰よりも愛している人だからだよ。陽馬にはうんと気持ち良くなって欲しいんだ。俺って昔は本当に最低な奴でさ。自分の快楽ばっか追って、女の子が気持ちいいかどうかなんて二の次でさ。でも陽馬は違う。陽馬が気持ちよくなるなら俺、どんなヤラシイことだってしてあげれる」 「……律……」 「それにさ、陽馬はどう思ってるか分かんないけど、俺、おまえとするとき、いつも余裕なんかなくてすごくドキドキしてるよ」 「本当に……?」 「本当に」 「律……」  僕は律の体に抱きついた。  耳元で聞いた律の胸の鼓動は確かに速いような気がした。  そのあとは二人してラブホテルの広いバスルームでじゃれ合い、もう一回セックスして、僕たちは初めてのラブホテルをチェックアウトした。  このとき、僕はまだこの日のラブホテル経験は僕と律との甘い思い出の一つになったとしか思ってなかった。  だけど……。             

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