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第122話 突然のカミングアウト
りっ律!?
愕然とする僕の隣で律が尚も言葉を繋いでいく。
「ラブホはそのとき一回だけだけど、この家の俺たちの部屋では何回も数えきれないくらい体を重ねてる」
「律、もうやめてよっ」
僕が必死に律の暴走を止めようとするのと、父さんが律の頬を拳で殴るのが同時だった。
「おまえ、何をしたのか分かってるのか!?律! 血は繋がってなくてもおまえたちは家族だし、第一男同士じゃないか!!」
「父さん、やめて! 律、大丈夫!?」
唇の端を切った律を心配する僕に、今度は母さんが憔悴しきった顔で聞いて来る。
「陽馬、本当なの? あなたたち、本当にそんなことを」
僕が口を開こうとする前に律が言った。
「母さん、ごめん。俺が先に陽馬に手を出したんだ。……でも俺は真剣に陽馬を愛してるし、陽馬も俺を思ってくれてる」
そして律は父さんと母さんの前で土下座をすると怖いくらいに真剣な声で、その言葉を紡いだ。
「父さん、母さん、陽馬を俺にください」
「律……」
僕は愛しい人の名前を呟くと、彼と同じようにフローリングの床に膝をついた。
「僕も律を誰よりも愛してます。律の傍にいさせてください」
土下座する息子たちに、母さんは今にも倒れそうだし、父さんは怒りのあまりに握った拳が小刻みに震えている。
リビングは修羅場と化していたが、両親を前に僕と律のことを告白して、僕は胸のどこかにいつもつかえていたものが降りるのを感じてもいた。
ああ……とうとうカミングアウトした。もう後には引けない。
どこまでも律についてくだけだ。
けど、当たり前だけど、はい、そうですかと父さんや母さんが僕たちのことを認めてくれるはずがない。
「出て行け! もう顔も見たくない!!」
父さんが声を荒らげリビングをあとにし、
「あなた、待って!」
母さんがそれに続く。
リビングに残された僕と律はしばらくその場で座り込んでいたが、やがて律が立ちあがり、僕の手を取って立ち上がらせてくれる。
「大丈夫か? 陽馬。おまえまで土下座する必要ないのに。こういうのは俺の役目なんだから」
そう言って苦笑する。
僕は律にどうして急にカミングアウトする気になったのか聞いてみた。
テーブルの上に散らばっている写真のことだって、律ならうまくごまかせた気がするのに。 しかし律はますます苦笑を深めると。
「さすがにラブホ入って行ってる写真はごまかしきれないよ。それにね」
律はそこでいったん言葉を切り、更に続ける。
「それに、もう隠すのも嫌だったんだ。嘘をつくのもね。だって俺たち何も悪いことしてないんだから。だろ?」
「うん。だけど……父さんと母さんを悲しませちゃった……」
「いつかは分かってくれる……そう信じよ?」
「……ん」
「好きだよ、陽馬」
律は僕を引き寄せ強く抱きしめてくれた。
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