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第125話 朝を迎えて

   翌朝、泣き明かしてはらした目でダイニングへと行くと、父さんはおらず、憂い顔の母さんだけがいた。 「……おはよう、母さん。……父さんは?」 「とっくに会社に行ったわ。……早くご飯食べて、大学へ行きなさい」 「……僕もう大学辞めるよ。父さんだってそれを望んでいるんでしょ?」  男同士でしかも血は繋がってないとはいえ家族の僕と律が愛し合うことを父さんのようなタイプの人は絶対許せないはずだから。 「何言ってるの。父さんはあなたが大学へ行ってまじめに勉強していい会社に入ることを誰よりも願っているのよ」  そんなふうに答えた母さんの言葉には、しかし明らかに棘があった。  僕と律を責める棘が。 「僕の人生を父さんと母さんに決める権利はないよ。僕は絶対に律と別れないから。……行ってきます」  背後で母さんが重い溜息をつくのを聞きながら僕はダイニングから出て行った。  玄関を出たところで律からラインが届いた。『おはよ。陽馬、今どこ?』  可愛いウサギのスタンプとともに送られてきたメッセージにささくれ立っていた心が癒されるのを感じながら、僕も律にラインを返す。 『大学へ向かうところ』 『へえ、父さん、陽馬が大学へ通うのを容認したんだな』 『っていうか、まじめに勉強していい会社へ行けって言われて、母さんとちょっとバトッちゃった』 『あんまり母さんを悲しませるなよって、俺が言えたセリフじゃないけどね』 『母さんのことはもういいよ。それより律、昨夜はどこへ泊ったの?』 『友達のところ』 『……もしかして、女の子じゃ』  一抹の不安を感じて聞く。 『そんなわけないだろ。野郎のむさくるしいところだよ。しばらくは友達のところをはしごしながら、金貯めて、安いアパートでも借りるつもり』 『アパートが決まったら一番に教えてね』 『勿論。あ、もう授業が始まる。じゃ陽馬、また夜にでも電話するから』 『うん。待ってる』  僕は律をイメージするスタンプを送ってラインの画面を閉じた。

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