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第126話 僕の夢って?

 いつでも家に律がいることが当たり前だったので、彼がいない生活はとても寂しくて悲しかった。  勿論、律は毎晩電話をくれるけど、傍に彼の存在を感じないと言うのは本当に辛くて。  会いに行きたいって言っても、律は、「今、陽馬に会っちゃったら、俺とめられなくなっちゃう、それって、俺にも陽馬にもよくないことだと思うから」と切なそうな声で応えられる。  せめて姿だけでも見に行こうかと思ったりもしたけど、やっぱり今、律を見ちゃったら、とめられなくなっちゃうからやめにした。  父さんと母さんは当然と言っちゃ当然だけどすごくピリピリしていて、僕と律の仲は絶対に許さないと言っている。  まるで針の筵の上にいるようで、僕はバイトの時間を増やし、できるだけ家にいないようにした。  大学へも通ってはいたが、やはりやめようと思ってる。  そのことを学に話すと、 「何でやめちゃうんだよ? せっかく猛勉強して受かったのに」  学食のA定食をほおばりながらとめられた。 「だって僕と律のこと許さないって言ってる父さんに大学の学費出してもらうなんて悪いし、だいいち僕には大学に来ても特にしたいことなんてないもん。それならやめてどこかの会社に就職した方が一緒に住むお金も貯まるし」  食欲がない僕はオレンジジュースのストローをガジガジ歯で噛みながら、いじけた調子で答える。  勉強するのは嫌いじゃない。いろんなことを学ぶのは楽しいし。  でも今はそんなのんきなこと言ってるときじゃないから。 「陽馬、おまえ、本当に大学でやりたいこととかないのか? せっかく境遇に恵まれてるんだ。佐藤律だってそう言ってるんだろ?」  僕は唇を噛みしめる。  律も電話で同じようなことを言ってたんだ。 『陽馬、大学通えるなら通えよ? お前は俺と違って真面目だし。……それにな、陽馬、夢とかやりたいことって無理して見つけるもんじゃないよ。いつかきっと陽馬もやりたくてたまらないことできると思う。そうなったとき大学へ通ってた知識が必要になるかもしれないだろ? 俺は父さんに感謝してる。陽馬のこと大学へ通い続けさせてくれて』  そのときの律の言葉が耳朶に蘇る。  夢、やりたいこと。  僕は律のような特殊な才能はないけど、律が思い存分デザインに没頭できるような環境を作ってあげたいと思う。  雑多なことで律がデザインをする時間がさかれることがないように……。  僕がそう言うと、学はしばし考え込むようなそぶりを見せてから応えてくれた。 「……それじゃ経営の方とか勉強してみたらどうかな?」 「経営……」  心の奥がドキッとした。  少しだけ……本当に少しだけだけど、僕のやりたいことが見えた気がしたんだ。  それから約一か月後、律から住む部屋が決まったって連絡があった。                                                                     

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