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第127話 久しぶりの再会
夢に向かって一歩前進ということで、僕たちは久しぶりに会うことになった。
その日、律に指定された駅前に立ち、僕は胸をドキドキさせていた。
電話では毎日のようにおしゃべりしていたが顔を見るのはいったいいつ以来だろう?
浮きたつ心を抱えながら待っていると、遠くの方に律の姿が見えた。
輝くようなオーラは相変わらずで、どんなに遠くにいてもどんなに人混みの中にいてもすぐに見つけることができる。
律も僕に気づいたのか、長い腕をブンブン振って走りながらこちらへと向かってくる。
わ。ダメだって、律。女の子がみんな律の方見てるじゃないか!
そんな眩しい笑顔、僕以外の前で見せないで。
僕が独占欲に駆られている間にも律は長い脚で傍までやって来て、僕を思い切り抱きしめた。
「わわわわわ。り、律、ちょっと」
「陽馬! 会いたかった!!」
「り、律、ひ、人目が」
芸能人顔負けの美貌の律が冴えない僕を抱擁しているシーンは余程稀有なものなのだろう。女の子だけじゃなく、男も年配の人たちまでもが注目している。
なのに、律は抱きしめて来る腕を緩めることなく拗ねて見せる。
「なんだよ、陽馬。久しぶりに会ったのに冷たいな。もう両親にまで俺たちの仲は知られてるんだぜ? 今さらそこら辺にいる奴にバレようが構わないじゃん」
「……それは、うん、そうだけど」
「だろ。……な、陽馬、もっとよく顔見せて?」
律が僕の頬を両手で包み込むようにして顔をのぞき込んで来る。
至近距離で見る律は相変わらず綺麗すぎて心臓に悪いんだけど……あれ?
「律? 痩せた?」
「え? そうか?」
「痩せたよ! 頬こけちゃって……随分無理してるんじゃないの?」
僕は心配になった。
住む家を見つけるため律はバイトの深夜シフトを増やしていたみたいだし、デザインの勉強もあっただろう。
「そんなことないよ。俺こう見えても結構タフだし」
「でも、なんだか少し顔色も悪いみた――」
言いかけて律の人差し指にとめられる。
「陽馬、それ以上色気のないこと言ったらキスするよ、ここで」
「~~~~」
律はにっこり笑うと。
「本当にそんなに無理してない。……これ、本当は秘密にしておかなきゃいけないんだけど、母さんがね、毎月少しずつだけどお金送ってくれていたんだ……父さんには内緒でね」
「え!? 母さんが?」
「うん。……まあ、俺たちの仲を認めてくれたわけじゃないみたいだけどね」
でも、と律が言葉を続ける。
「そのおかげで予定より早く部屋を見つけることができた……すごいボロだけど。今から行くだろ?」
「うん!」
「じゃ行こう」
律が僕に手を差し出す。僕はおずおずとその手を握る。
こうして衆人環視の中、僕たちは仲良く手を繋いで、その場をあとにした。
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