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第128話 アパート
「すげぇボロだろ?」
「……うん、すごいボロだね」
僕たちは現在律が住んでいるアパートの前に立ち、その佇まいを見上げていた。
まるでそこだけ昭和にタイムスリップしたみたいな建物だった。
二階建て。上と下に三室ずつ。外についている階段はさびついていて足を踏み外さないかちょっぴり不安になる感じ。お風呂は勿論ないけど、かろうじてトイレは個別についているらしい。
「これでも予算ギリギリ。母さんの内緒の仕送りがなければここにも住めない。家を出てみて自分の無力さに気づいたよ」
律が自嘲気味に呟く。
「律……、そんなことない。僕が実家でぬくぬくしてるあいだに律は一所懸命ここを探してくれたんでしょ?」
「陽馬の方は針の筵状態だっただろ?」
律は僕の頭をポンポンと優しく撫でてくれてから、アパートを見上げて言葉を放つ。
「母さんから借りたお金はいつか必ず返すつもりだよ。……さ、部屋の中入ろ?」
「ん」
カンカンと音をさせながら僕たちは年季の入りまくった階段を上った。
律の部屋は二階の角部屋だ。
扉を開けて律が中へと促してくれる。
外観に比べると部屋の中は比較的綺麗で開放感があった。
……っていうかほとんど物がないせいでそう思うだけかもしれないけど。机とマットレスのベッドだけしかないと言っても過言じゃない。
「冷蔵庫は学校の友人がいらなくなったのを譲ってくれるから」
「そうなんだ……でもなんかいいな、このアパート」
「こんなにボロいのに?」
「律がいるだけで、華やかに見えるもん。えーと掃き溜めに鶴ってやつ……?」
「掃き溜めって、大家が怒ってきそうだな。……それより陽馬……」
律が腕を伸ばしてきて僕を抱きよせる。
「やっと二人きりになれた……」
「あ……律……だめ……」
首筋に吸い付かれて、しばらく忘れていた快感が体中を駆け巡る。
「ずっと、陽馬を抱きたくてたまらなかった……」
「律……律……」
服の裾の中から律の少しひんやりした手が入り込んできていたずらを始める。
乳首をひねられて思わず甘い悲鳴が漏れる。
「あっ……あん……」
「陽馬、声。ここ壁薄いから隣に丸聞こえと思うよ」
そんなことを楽し気に言う律。
「……!」
僕は慌てて唇を自分の手で塞ぐ。その間にも律は愛撫をやめてくれなくて、僕は焦れた快感に涙目になってしまう。
そして。
律が自分の硬く昂ぶった雄を僕の昂ぶりに押し付けて来た。
「……っ……」
律は僕の手を退けると、自らの唇で僕の掠れる嬌声を抑えてくれた。
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