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第130話 甘い夢

   次に目を覚ました時、窓の外はとっぷり日が暮れていた。  僕の体はすっかり綺麗にされ、律のシャツを着せられ、ベッドで寝ていた。  律はそんな僕の傍に座り、スケッチブックに鉛筆を走らせている。 「……律」 「あ、陽馬、目覚めたか?」 「うん。ごめんね、寝ちゃって」 「いいよ。代わりに可愛い寝顔たっぷり見せてもらって、なんかイメージ湧いたから」 「イメージ?」  僕は怠い体を起こして律のスケッチブックを覗き込んだ。 「ん。ウエディングドレスのね」 「ウ、ウエディングドレス?」  確かに律のスケッチブックにはドレスを着た美少女? 美少年? が描かれている。  ……これって、もしかして、僕???  り、律の目には僕がこんなふうに映ってるの? 一回目の検査してもらった方がいいんじゃ……。 「このドレスができたら、陽馬、俺の前で着てくれよ」 「……本気?」  こんな綺麗なドレス、僕なんかに着こなせっこない。  僕は頭痛がする思いで、描かれたウエディングドレスを見下ろしているというのに、律は至って真剣な様子で言う。 「本気。……女の子じゃないのにって怒るかもしれないけど、やっぱり俺は陽馬にこのドレスを着て欲しい」 「律の方が似合うんじゃない……?」  律は綺麗だからきっと女装しても似合うと思うし。  しかし律は僕の言葉を完全に無視して、薄茶色の瞳に僕を映して言葉を重ねる。 「いつかこのドレスを着て、結婚式を挙げような、陽馬、絶対に」 「結婚式……」  それは僕にとって永久に無理だと思っていたものだった。  なのに、この世で一番愛してる人に言われて、僕の涙腺は一気に崩壊した。  律は僕の涙にそっとキスをしてくれる。 「……その時はさ、父さんや母さんにも来てもらえるといいな」  囁きに僕は泣きながら何度も何度もうなずいた。  本当にそんな日がくればいいな。  律のタキシード姿は文句なしにかっこよくて、僕はやっぱり恥ずかしいからベールで顔を隠して、でも律がデザインしてくれた世界でたった一枚のウエディングドレスを身にまとって。  父さんや母さんの祝福を受けて。  そんなの、叶いっこないのは分かっていても……夢だけはみていたい……。                                                                           

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