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第132話 律が……!

 その日から僕と律の二人暮らしが始まった。  律はバイトのシフトをいっぱいいっぱいに入れていたので、擦れ違いになることが多かったけど、それでも同じ場所へと帰って来れることが何よりも嬉しかった。 「それで同棲までして幸せいっぱいいっぱいな癖に、何そんな暗い顔してるんだ?」  大学のカフェテラス、学はコーヒーを一口飲んでから、僕に問いかけた。  僕はココアを両手で包み込みながら溜息とともに答える。 「律、バイトと学校との両立ですごく忙しくしていて、ほとんど眠る暇もないくらいなんだ。少ない休みの時間もデザインの勉強をしているし……」 「何? 構ってくれないって不満なのか? 陽馬」 「違うよ! 体を壊すんじゃないかって心配なんだよ、どんどん顔色も悪くなって行ってるし」 「……なるほど。奥さんとしてはだんなさんの健康が気にかかるわけね」 「お、奥さんって……学、何言って」 「だっておまえら新婚の夫婦まんまじゃん。それに、だんなが疲れてるって言ってもちゃんとエッチはしてるんだろ、きっと」 「学っ!!」  僕がわたわたと反応すると、学がまた煽って来る。 「図星だ、やーらしいのー。結局やることはやってんだ~」 「し、してないっ」  本当はしてるけど。  律は実家にいた頃と変わらず、どこにそんな元気があるんだって具合に僕に手を出して来る。  この前も「俺のオナニーの指導の効果見せてみ」とか言って、僕に何回も自慰をさせてから、襲い掛かって来たし……。  僕が真っ赤になってそんなことを思い出していると、ズボンのポケットに入れてあったスマホが鳴った。 「? 知らない番号だ」 「間違い電話じゃね?」 「そうかな……なんか嫌な予感がするんだけど」  僕が呟きながらも通話ボタンを押すと、スマホの向こう側から事務的な声が聞こえて来た。 『こちら鴨根総合病院ですが、佐藤律さんのお知り合いの方でしょうか?』  ドクンと冷たい何かが体を駆け巡る。  病院? 「あ、は、い。そうですが」 『佐藤さんが倒れてこちらに救急搬送されました。今すぐ来ていただけますでしょうか』  目の前が真っ暗になった。  それでも無意識に今すぐ行くと答えていたようだ。学が前の席で心配そうに聞いて来る。 「どうした? 陽馬! 真っ青じゃないか。電話誰からだよ?」 「病院……律が倒れたって。行かなきゃ……!!」  気は焦るのに体が震えてなかなか動けないでいる僕の手を学がつかんで立ち上がらせてくれた。

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