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第133話 病院

   一人で行かせられないと学がタクシーに同乗し、二人して鴨根総合病院まで行った。  受付で律の病室を聞き、学はそのまま待合で待つと言ったので、そこからは一人でガクガクする足を抑えながら部屋まで向かう。  震える手でノックして病室に入ると律は点滴はしていたけれどももう意識を取り戻していて僕を見ると困ったように笑った。 「……来てくれたのか? なんて顔してるんだよ、陽馬」 「だって……」  思いのほか元気な律の姿を見て、張っていた気が一気に緩みついでに涙腺も緩んだ。  ポロポロと涙を零す僕に律はますます困ったような表情になり、僕の頭を優しく撫でてくれる。 「ちょっと疲れがたまってただけだから心配ないって医者も言ってたから、俺なら大丈夫。陽馬。ごめんな、心配かけて」  律の話によるとコンビニのバイトに行く途中で急にひどい眩暈に襲われそのまま気が遠くなったそうだ。通りかかった人が救急車を呼んでくれ、この病院に運ばれたらしい。 「……ごめんなさい、律」 「? どうして陽馬が謝るんだ?」 「だって、律の体調を管理するのは僕の役目でしょ……? 律が疲れていることに気づいていたのに何にもしてあげられなかった自分が情けなくて」  涙声で訴えると律は一瞬きょとんとしたような表情になった後破顔した。 「ほんとにどうして陽馬って、そんなに可愛いんだよ? そんなふうに言われたらまるで陽馬が俺の奥さんみたいで嬉しすぎるんだけど」  奥さん……律の奥さん。さっき学にも同じこと言われたけど、律の口からその言葉を聞くとなんだかちょっとくすぐったくて、気持ちが少し浮上する。 「これからはあんまり無茶しないでね? ちゃんと休んで」 「あー、まあ、ね。課題が一つクリアできたからこれからは少しだけゆっくりできるかな」 「ほんとに?」 「うん。でも陽馬とのエッチは減らせないけどね」 「もう! こんなときに何言ってるんだよ」  真っ赤になって抗議すると、グイと体を引き寄せられた。  近づく綺麗な顔。そっと触れ合う唇……。 「ん……律……」  二人して甘いキスに酔っていると、病室の扉がノックされるのと同時に母さんが入って来た。 「律くん! 大丈夫――きゃ!」  濃厚なキスを目の当たりにして母さんが声を上げ、僕たちは慌てて体を離す。  

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