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第135話 朗報
結局律は一泊ゆっくり入院しただけで退院を許され家へと帰って来た。
父さんと母さんの援助のおかげで律は無理なシフトを入れることなく学業の方へと専念することができるようにもなった。
それはいいんだけど、ね、律が今とりかかってるのが僕が着るというウエディングドレス。
日に日に出来上がっていくそれは、律の才能があらん限り発揮された輝くばかりの艶やかなもので。
「……本当にこれを僕が着るの?」
「当然。良く似合うよ、きっと」
「…………」
嬉々としてドレスを作る律と、複雑な気持ちの僕のもとにその朗報は届いた。
律のデザインした服がコンテストに入賞したのだ。それも大きなコンテスト……今までたくさんの有名なデザイナーを誕生させている。
「すごいっ! 律、すごいよっ!! おめでとう」
一報を聞き、嬉しさのあまり律に思い切り抱きつくと、律は優しく髪を撫でながら囁く。
「ありがとう、陽馬。でもさ、入賞できたのは陽馬のおかげなんだよ」
「え? どゆこと?」
「陽馬を見てるとね、いろいろなデザインが浮かんでくるんだ。入賞したのもそんな中の一つだから」
「律……」
律の言葉一つ一つが心に染み入り涙になって零れ落ちる。
律はずっと僕を強く抱きしめてくれていたが、やがて体を離すと僕の手を取った。
ジッと見つめて来る綺麗な薄茶色の瞳。
そして律が口を開く。
「陽馬、改めて言わせて。俺と結婚してください。絶対絶対幸せにするから」
「あ……」
もう充分幸せだと言いたかったが、その言葉は涙にまみれて言えなくて。
僕は何度も何度もうなずくことしかできなかった。
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