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一之瀬守編2-3 ※無理やり、初めて
「少し静かにしてろ。兄貴のこと、早速ばらされたいのか」
「むぐっ……ぅ……」
耳元で改めて脅迫の言葉を囁いてやると、途端に守の抵抗が収まった。
信頼していたはずの同僚教師から組み敷かれ犯されるという凄まじい嫌悪と恐怖から、守はポロポロと大粒の涙を溢れさせていた。
八の字に垂れ下がった眉と瞳が何ともいじらしく、もっと泣かせてやりたくなる。
学生時代はいじめられっ子だったと聞いたが、これではそうなっても仕方ないとすら思えてくる。
みっともなく涙を流す守のひ弱な顔を見ていると、想悟はこれってまるで本当にレイプ魔みたいだな、なんて自身の凶行を客観的に思う自分がいた。
(こ、こわ……ぃ……いたい……やだ……でも、兄さんのことは、ばらされたく……────)
兄のこととなると、守は頑なな心を再び閉ざしてしまう。
しかし、綻びは生じている。
無理やりに肉穴をこじ開け、肛内に浸入しているのだから、それも妥当かもしれない。
このまま彼の身を犯し尽くして、その心を土足で踏みにじり、彼がそこまでして胸の奥で隠している何かを、もっと知りたいとすら思えてきていた。
まだ聞こえない。全く足りない。
生まれつき持ったものであるのに、自ら拒絶してきたせいで鈍くなった読心能力が今ばかりは憎かった。
「なぁ……俺のが入ってるの、わかるか……? あんたはこんなに痛がってるのに、俺は……はぁっ……すごく気持ちいいっ……なんだこの感覚……くそっ」
温かい直腸粘膜に包まれながら摩擦の刺激を得るのは自慰とは比べものにならないほど気持ち良く、想悟は行為を覚えたての猿のように腰を使った。
初めは恐る恐るといったような動きも、漏れ出た先走りで潤ってきたのか、守のアナルが順応を見せてきたのか、徐々に動きやすくなってくるたびに、大きくリズミカルに腰を振りまくる。
(くっ、苦し──い……お尻がどうにかなりそう……ひっ、ひどい……誰か助けて……っ。どうしてこんなことになったの……? オレ、何かしたの……ううっ、ひぐぅっ)
兄の脅迫はずいぶん効き、守は大人しく想悟の自分本位の抽送を受け止めていた。
心でも鬱々と泣きながら、今はただひたすらに、この暴虐を耐えるしかないといったように目を伏せて、猿轡代わりの下着を噛み締め、なるべく声を漏らさないように意識を集中させている。
しかし、一時が過ぎればこの凄惨な凌辱も終わると思っては大間違いだ。
意識をどこか闇の彼方へ飛ばしてしまいそうな守に、想悟は無理やり現実と向き合わせる言葉を選ぶ。
「おい。今どんな気持ちだ? 痛いか? 苦しいか? 俺が怖いか」
「ふぐうぅぅ……う、うふんっ……」
(痛いよおぉぉ…………こ、こわいっ……霧島先生、あんなに良い人だったはずなのに……あなたとなら仲良くなれるかなって────兄さんのことで悩んでいることだって、いつか相談できるかなって……思ってたのに……)
蹂躙される守の心が少しずつ露わになってきて、想悟はハッとした。
そうか。守は俺を利用する気なんか考えつかないほど鈍い奴だったのか。ただ単純に仲良くなりたいと思っていたのか。
彼の心から剥がれたほんの一部は、己の逆恨みだったと気付く。
もし違う未来があったのなら、守とは良い友になれていたのだろうか。
秘密のある者同士、照れ臭いほどの清い友情を築いて、守は兄のことを、想悟は読心のことを告白し合えたりしたのだろうか。
でももう遅い。既に行動に移してしまった。
それに不思議なことに、後悔など一切湧いてこない。
これで良かったのだ。この道しかない。
神嶽は守の兄を毒牙にかけた。俺はその後を追って立ち向かうことすらできず、中途半端に事を投げ出すのか? 神嶽に負けるのか? そんな自分勝手な考えばかりが想悟の頭をよぎっていく。
「はぁっ、くそっ! マジで気持ちいいっ……イキそうだ……! ははははっ……! 守先生、このまま我慢しないでたっぷり中出ししてやるからなっ……!」
自分でもこんなに凶悪な台詞が言えたのか、と思うほど、想悟は迫りくる倒錯した欲望に逆らうことができなかった。
今の想悟を支配しているのは、この上ない嗜虐心だった。
(い、いやっ! もう許してくださいっ! 中出しだなんてそんな……嫌だあああっ!)
体内に射精されると聞いて、じっと耐えていた守が再びひどく泣いてかぶりを振った。
猿轡の中で弱々しく呻いて、せめてもの抵抗をする。
しかし、その程度で想悟を止められはしない。
「ぅッ──くうっ!」
徹底的に守を汚してやりたくて、想悟は深いところで動きを止めた。
呻きと共に爆発的な性欲の全てが爆ぜ、何度も先端から噴き出しては守の直腸内に叩きつけていく。
(ひっ、ひどいっ……本当に中に出されてるのがわかる……こんなにたくさん……。出さないでって、願ったのに……オレ……何も……聞いてもらえなかった……あぁ……)
心で落胆したからか、守の身から強張っていた力がスーッと抜けていく。
守自身初めての肛虐に疲れてしまったのか、締め付けも弱くなって、先ほどまでの快楽は得られなくなってきた。
射精を終えたことで、想悟も我に返ってきた。
ひとまず初回の凌辱は済んだが、これだけでは逃げられてしまいかねない。
すすり泣く守と結合しているところを、携帯を取り出してまず写真に収める。
そして想悟は最後の一滴を絞り出すかのように何度か腰を振って扱いてから、ようやく守の中から引き抜いていった。
疲れ切ったアナルから白濁が溢れ出してくる惨めな様まで、しっかりと守の顔が写るようにシャッターを切った。
これを誰かが見れば、守が男とそういった行為に耽っていたことは一目瞭然だ。
「学園を辞めようだとか、警察に訴えようだとか、野暮なことは考えるなよ。生意気な真似をしたら、兄貴の情報と一緒にこれもばら撒いてやるからな」
想悟は言いながら、守の髪を掴んで顔を画面に向けさせ、携帯をひらひらと振ってみせる。
これが露見すれば、守の人生は確実に破滅する。涙に濡れた瞳に浮かぶ絶望の色が、ひときわ濃くなった気がした。
あんなに悩んでいたのが馬鹿らしくなってくるほどに、罪悪感はこれっぽっちも抱かなかった。
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