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一之瀬守編 6-2 ※体調不良、イラマ
想悟はうんざりしながら、守の部屋の窓を見つめ、その場で彼の携帯へ発信する。
『……は、はい』
普段よりさらに気弱そうな声の守が出た。
電話に出られるくらいには回復したらしいことは、ひとまず想悟も胸を撫で下ろす。せっかくここまで足を伸ばしたというのに、彼からそれなりの反応が得られなければつまらないからだ。
守はまさか着信の相手が想悟だとは、微塵も思っていないだろう。
「守先生。俺だ」
その証拠に、電話の向こうで守が息を呑んだ。
『……っ!? ど、どうして、オレの携帯の番号を……?』
「ああ、新堂先生に聞いてさ」
もちろん番号だってあらかじめクラブから聞いているから、それは真っ赤な嘘だ。想悟からすれば、ただ守を震え上がらせることができればそれでいい。
「それよりな、俺、あんたの家の前に居るんだ」
『えっ……?』
「今から行くから、部屋の鍵、開けといてくれよ」
『ち、ちょっと待ってください、そんな、いきなり……』
「今すぐ開けろ。断るって言うなら、あんたの素生をアパートの住民達にばらす」
『ひ……っ!』
窓のカーテンが少しだけ動いた。守の姿は見えない。そうやって、恐る恐る自分のテリトリーにまで姿を現した脅迫者を探している。
「おい。何してんだ。早くしろよ」
『は、はい……っ! ……あ、開けました……』
「よし。じゃあ玄関で待ってろ」
本当に面倒なことをさせる。だが、今夜はそのぶん守を嬲ることができるという楽しみの方が大きかった。
目的の部屋に着けば、想悟は守が出るなり、そのまま彼を畳の上へ突き飛ばした。後ろ手にドアを閉めると、靴も脱がずに部屋に上がり、後ずさりしようとする守に馬乗りになる。
「騒ぐなよ」
そして、すかさず守の口を手のひらで塞ぐ。突如として現れた凌辱鬼への恐怖のせいか、守は早くも涙目になっていた。
改めて感じる背徳感に背中がぞわぞわして、反対に股間は熱と硬さを増していく。
「ふーん……」
守を押さえ付けながら、想悟は部屋を見回す。新社会人が暮らすにはちょうどいい狭さの和室のワンルーム。
守の部屋には初めて入ったが、やはり年がら年中絵を描いているのだろう。普段作業をしているらしい机には画材の数々が並び、油絵の具の臭いがする。
アパート自体は古く狭いが、それでも木の温かみがある家具が並んでいる。掃除も行き届いていて、れっきとした彼のアトリエだ。
加えて、今の守の格好。安物のパジャマに、額には冷却シートを貼っている。
想悟が来るまでは、一時の平穏に胸を撫で下ろしていたのだろうか。治ればまた犯されると怯えていたのだろうか。そもそも寝込んでいて考える余裕もなかったのだろうか。
そういえばあまり興味のなかった守の私生活。とはいえ、日陰でひっそりと生きている彼の日常は、面白味の欠片もないだろう。すぐにどうでもいいと頭から消した。
「いいか、これから手離すぞ。騒いだら……その時はどうなるか、わかってるよな」
「……っ、……!」
(っ……かり、わかり、ました……!)
守がコクコクと頷く。一日ぶりの守の心の声が、なんだか新鮮に感じる。
ゆっくり手を離してやると、守は大きく息を吐き出した。想悟の言うことを聞いて、声は上げない。
「あんたが倒れたりなんかするから、こっちは調教が遅れてんだよ。ただでさえあんたは仕事が遅いからイライラするってのにどうしてくれるんだ」
「そ、そんな……調教、だなんて……」
「あんたは男に犯される為の性奴隷になるんだ、しっかり俺の指導を受けろ」
「いや……嫌ですっ、そんな、人を物みたいに……」
「わからねぇ奴だな。あんたもあのクラブで嬉々としてあんたを輪姦しまくる連中を見ただろ? あそこにはああいう風に同じ人間を無理やり堕ちるところまで引きずり下ろすことが好きな輩しかいない。俺だって……そうだ。あんたには俺が優しく見えてたのかもしれないが……本当は……本心はずっとずっと、誰かをこうして犯してみたかったんだ」
「霧島先生……あなた……まさか、本気でそんなことを……?」
想悟の恐ろしい野望を聞き、守はガクガクと身を震わせ始めた。
男に自分の肉体を性の捌け口にされるだけでも強いショックを与えるつらい出来事であったのに、不特定多数の慰み者にされる為の調教を施されるなど、とても想像なんてしたことがないだろう。
それも一時は信頼に値する同僚だと思っていた想悟が吐露した歪んだ感情は、守には到底理解できない。
想悟は素早い手つきでチャックを下ろすと、既に臨戦態勢の逸物を取り出して見せた。
「しゃぶれよ」
守の頭を鷲掴みにして、顔に近付ける。露骨に嫌そうに顔を背けるものだから、想悟は守の腹めがけて、思い切り拳を振り下ろした。
殴られ咳込む守。想悟は守の胸に跨り、髪を掴んで引き寄せると、その無防備に開いた口にペニスをねじ込んだ。
「嫌っ……んむうううぅっ!?」
熱で体温が上がっている守の口腔内は、思った以上に気持ちが良いものだった。じんわりと熱い粘膜が全体を包んでくれるのがたまらない。
想悟は一方的に守の髪を掴んだ手を動かして、亀頭を口蓋や舌に擦り付ける。
逃げ場のない守は想悟の下で、えずきながらもじたばたと脚を動かしてもがいている。まるでひっくり返った虫みたいだ。守にはお似合いの姿だと思った。
「受け身になってるだけじゃ終わらないぞこのグズ。あんたも舐めろ」
「うぅっ……!? げほっ! んぐぐぅっ!」
喉をひと突きしてやると、守が大きくむせた。逃げようとする身体を、想悟はさらに体重を掛けて押さえ付ける。呼吸さえままならない為、守は必死に口を開けて舌を絡め始めた。
もう逃げられないと悟ったか。抵抗しようとばたつかせていた手は想悟の両腿に添え、涙を流しながら、強引に押し入ってきたペニスを咥えている。
子犬がピチャピチャと小さな舌でミルクを飲むような、想悟の顔色を伺う遠慮がちな動き。相変わらず守のフェラチオは呆れるほど下手だった。
「もっと強く吸えよ」
「んんっ……ふ、ふぁい……」
言われなくちゃ何もできないのか、こいつは。いつもいつも情けない守に想悟は苛々が募っていく。
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