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一之瀬守編 6-4 ※体調不良
ここはひとまず馬鹿みたいなことを考えた守へお仕置きだ。想悟は指で守の乳首を強く捻る。
「ひ、あぐっ……!!」
「……一之瀬さん? なんだかドタバタ音が聞こえたけど、本当に大丈夫なの? もしかして、相当具合が悪いんじゃ……」
(ば、ばれる……大家さんにばれちゃうっ……嫌だ……ばれるのだけは、本当にやだっ……!)
「ぁ……だ、大丈夫ですっ。……じ、実は、友人がもうお見舞いに来てくれていて! それで、つい盛り上がっちゃって……! うるさかったならごめんなさい! あ、あの、また後でそちらに伺いますので……!」
追い詰められた守は、咄嗟にそう言い訳を口にした。
大家も、来客が来ていると言われれば、身を引くしかない。
「あらっ、そうなの、じゃあ快方に向かってるってことね。良かったわねぇ。落ち着いたらでいいから、声を掛けてね、待ってるわ」
それだけ言い残して、声と足音が遠のいていった。ひとまず大家に見つかる心配が薄れ、守の身体から少し力が抜ける。
「ばれなくて良かったな。……ところで、俺のことを友人とは……とんだ皮肉を思い付いたもんだな」
「うぅ……」
「……本当は、そうなりたかった?」
「それは……」
(……なりたかったよ……なれると思ったよ……なのに……どうしてこんなことに……)
それは嘘偽りのない悲痛な心の叫び。初めて彼を犯した時にも聞き、思ったが……本当に友情を育めたかもしれない。
けれど守の窮屈な心に不信感を抱いてしまった以上、あの木村勝の兄弟だと知ってしまった以上、そんなことは絶対に無理な話だ。
「……もう、なれません」
守は涙をまた一つこぼしながら言った。守もさすがに輪姦だなんて悲惨な目に遭っては、想悟が考え直してくれるという淡い期待も地に落ち、諦めたか。
「そうだ。当たり前だよな。あんたは友達なんかじゃなく、根っからの不幸体質でお可哀想な奴隷になるんだからな」
「……どれい……にも、なりたくない……っ」
「させる。それが俺の役目だ」
友達ごっこからはようやく抜け出せたようだが、今度はその上下関係を徹底的にその心身に刻まなくてはならない。
住人が去ったのを良いことに、止めていた動きを再開する。
正直、想悟もあのまま我慢しているのは辛抱堪らなかった。とっとと腰を振って出すものを出してしまいたかった。
「あっ……す、げ……ほら、あんたのだらしねぇチンポもこんなに勃起して熱くなってやがる」
「嫌っ、さ、触らないでっ、駄目っ……!」
自身の獣欲しか眼中になかったはず……なのに、どうにかもがいて起き上がろうとしてくる守の額と、想悟の視線が絡まる。
「そうだ……冷ましてやろうか?」
「え……?」
想悟は守の額に貼られたままだった冷却シートを引き剥がすと、それを守の熱を帯びたペニスに巻き付けてやった。
「ひぎゃぁああああっ!?」
急所を冷やされ、守の喉から引きつるような悲鳴が上がる。
その声があまりに滑稽で、想悟は思わず吹き出してしまった。
「嘘っ……そ、それは、そんな風に使うものじゃっ……! 」
「当たり前だろ! ぶっ……はは、あははは! 何だその声!? 豚みてぇだな! 豚! このマゾ豚が!!」
やっぱり守は滑稽なくらいがちょうどいい。彼が学園を欠勤し、調教からも逃れている間、どうにも発散できなかったものがこの一瞬でどこかに消え失せていくようだ。
(やだ……冷たい、冷たいよっ……! もっ……ジンジンして……どうにかなっちゃう……!)
「お願いですから、もう、やめて……取ってくださいっ……! 助けてっ……」
「んなこと言う癖に、なんで萎えねぇんだ、よっ!」
異常事態の数々に、今度こそ混乱の極みに至ったのか、やはり彼は世良の言うような素質を秘めているのか……常人なら縮こまるようなことでも受け止めているどころか反応を示している。
それがあんまりにおかしくておかしくて、突き上げる動きが止まらない。
「んぐうぅっ! わ、わかりませんっ……わからな……ぐすっ……お願いします……もう許してください……」
想悟の数日間分の性欲が収まるまで、守は弱った身体で何度も乞うては裏切られの繰り返し。次第に覇気がなくなってくるのも時間の問題だった。
「用が済んだならさっさと帰れって顔だな」
「…………」
(本当……帰って……もう帰ってよ……! うぅっ……ひどい……ひどすぎる……)
「じゃあ、餞別。言っとくけど別にヤバイ薬ではないから安心して飲んで元気になれよ」
そう言って手渡した錠剤はクラブから拝借したかなり強い抗生物質。クラブが気に入らなくとも医療技術に関しては目を見張るものがあるから、そこらの病院に通うよりはよく効くはずだ。
(なんで……霧島先生は、あんな酷いことをするのに、優しいこともするんだろう……もうわからない……何もかも、わからないよっ……)
無言でうなだれる守。一方の想悟からすれば、どうして守が自分を優しいと感じるのかがよくわからなかった。
並の人間であれば酷いことをされたという嫌悪ばかりが脳髄を満たすはずなのに、殺したいくらい憎んでもいいはずなのに、それでも彼の中での優しさを相手から感じると、途端にその気持ちが薄れてしまう。人の善の部分をどうにか見出そうとする。
お前の脳内はお花畑か? 相変わらずお人好しすぎて馬鹿を見るとはまるで学習していない。けど、無意識のトラブルメーカーである以上は、優しさだけが良いところとも言えない。
……なんだかDV被害者気質というか。それこそ世良の言うM奴隷とはこういう思考を上手く操ってやればいいのかな。そんな風に物思いに耽った。
「今日は汗もかいたし、明日にはだいぶ良くなるだろ。休んだら休んだだけ見舞いに来てやるけどな」
「っ……!!」
もうほぼ条件反射だろう、声にならない悲鳴が上がった。
「い……行きます……明日は、学校へ……」
「無理しなくて良いんだぜ?」
「だ、大丈夫……です……っ。霧島先生が……その……お、見舞いにっ……来てくれたから……ぐすっ、うぅぅっ……」
想悟が玄関から出て、窓の外から見えなくなるまで、守は子供みたいにひたすら泣きじゃくっていた。
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