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一之瀬守編7-2 ※柳×守、緊縛、貞操帯

 後日、また守をクラブのVIPルームへ連れて来た。  実際に守を見た柳は「顔はあんま似てねぇなぁ」と首を傾げたが、勝の弟だと思うとやる気になるのだろうか。  麻縄を用意していた柳は、死ぬほどではないがキツく感じるような縛り方など、細かく説明し、守の身体を使って縛り上げながら教えてくれた。  縄師顔負け──というより、まるでプロだ。だが、柳いわくあくまで緊縛は手段と趣味だと言う。  そういえば、蓮見が大柄であるから、力任せだけでは通用しない相手などの為に、こういった技に長けているのかもしれない。想悟が初めにここへ来て拘束された時も、やけに素早く手慣れていたことを思い出す。 「ふぅ」  早速一仕事終えたかのようだが、顔は満足げだ。 「うぐ、ぐぐぐぐぐ……」  ただ、当の守は初めての緊縛に混乱し、苦痛を味わっている。  全裸でまるで降伏するように頭の後ろで両手を縛られ、背中から腰の辺りまで背面全体を格子のような形での縛り。さらに守は、天井に吊られてつま先立ちになっていて、果てしなく自由を奪われた状態だ。  前から見ても後ろから見ても赤い縄が白い肌に食い込み、ギチギチと音を立てている。ロクな説明もしていないのだから無理もないが。  さらに、股間は貞操帯が装着されていた。必ずしも射精できないという訳ではないが、この弱気な守ならば、どうしても我慢のならなくなった時には、自慰をしてでも悦楽から逃げるだろう、と考えたからだった。  控えめな彼には似合わない大きく長い仮性包茎ペニスが、無理やりに下向きに固定されている。  睾丸もギュッと締まっていて、あんなものを装着されたら、痛いというよりかは……出したい……そんな男の肉欲が勝ってしまうのではないかな、と守を見る。  鍵は柳が管理するものだろうな、と思ったのも束の間、こちらに投げ渡された。  何とかキャッチすると、柳が目を合わせてくる。少なくとも、守の「主」は想悟である……それは柳もわかっているらしい。 「あんまり動かない方が良いぞ。下手に抵抗すると余計に苦しい……らしいから」 「そ、そんな……お願いです、降ろして……縄を、解いて……この変なものも取ってくださいっ……あうっ!?」  バチンと柳に尻を叩かれて、守は悲鳴を上げた。 「ここまで来ちまったんだから、諦めも肝心ってもんだぜ。なーあ守センセよぉ。今から思う存分ハメてやっからなぁ、逃げられねぇぞ、ヒャハハッ」 (う、嘘……オレ、また知らない男の人に犯される……しかもこんなつらい体勢でなんてっ、ひどい……)  そう、まただ。また、守は見知らぬ人間に犯される。  でもそれがこれからの守にとっては日常とならなければならない。こうして無理やりにでも、慣れてもらわねば困る。 (そ、それにこの人……たくさんピアス付けてる……髪の色も派手だし、言葉だって汚い……。きっと、怖い人……やくざ……? 嫌だっ……怖いっ……! でも、本当に怖いのは、そんな人と平気で一緒にいる……)  恐怖する守の目線が想悟にいく。  ああ、そうだな。彼にとっては確かに柳よりも誰よりも怖いのは自分かもしれないな、と想悟はなんだか心外のような、気に入らないクラブ連中より少し優位に立ったような気分になって、小さくため息をついた。  しかしこうやって絶対に逃れられない状況の守を前にすると、口頭での命令や会員達の数にものを言わせた暴力とは違う、緊縛の何たるかが、わかってくるような気がする。  どんな弱い人間も、強い人間も、こうなれば一貫の終わり。まるで江戸時代の罪人だ。  柳の言うことも一理あると思った。飴と鞭。こうして危険にさらしておいて、甘美な悦楽を与えたら守はどうなるのだろう。期待に心が躍りつつあった。 「始めよう」  既にやる気満々だった柳は、想悟の言葉を聞くや否や、盛り上がった自身に潤滑剤を塗して、守の腰を掴むと一気に挿入に入った。 「はあぁ……久しぶりの奴隷調教。やっぱ最高だ」  常日頃から猿のように性に没頭してはいても、こうして調教下にある者を抱くのは神嶽以来か。  柳はうっとりとしながら、守の肌を舐める。舌にもつけられたピアスが彼の背を這い回って、気持ち悪さからかゾッと粟立っている。  守の身長とはあまり変わらない上に、吊り上げているから今はどちらかと言うと守の方が高い位置にいる。  それを下から突き上げるように挿入し、抱きすくめて熱心に腰を振る姿は犬の交尾みたいだ。それも凡人と社会のゴミ。雑種同士、なんだかお似合いにすら見える。 「ひぐっ! うぅっ……動かないでっ……! あぁっ、痛い……お、お願いしますから、やめて……やめさせてください、霧島先生っ……!」  柳がピストンするたびに守の不安定な身体は揺れて、縄がさらにきつく感じるようだ。さらには、勃起したくても貞操帯の適度な拘束感と苦痛。守にとっては正に拷問に他ならなかった。 「やめる訳ないだろ。俺のことは気にしなくていいから、可愛がってもらえって」 「そんな……! 酷いこと、言わないで……お願い……お願いですからっ……!」 「……まあ、でも。そうだな……何か手伝いは……できるかな」  しかし、こうして見ているだけと言うのも、なかなか面白いものではあるが、飽きてもくる。

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