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一之瀬守編7-3 ※柳×守、緊縛、鞭、蝋燭

 何か目ぼしいものはないか、部屋の中でプレイに使う道具を探す。  ぱっと目についたのは、赤い蝋燭だった。自宅にあるお洒落なアロマキャンドルとは大違いの、ゴツいSM用の低音蝋燭。  手に取って想像してみる。縄に蝕まれた守の身体を真紅に染めて、これ以上ないってくらいに情けのない姿にする……うん、悪くはない。 「柳……これ、使えないかな」 「へぇ。良いんじゃね」  そうして彼にライターを貸してもらう。やり方なんて全然わからない。けど、わからないからこそ、守の不安を煽ることもできるのではないか。  試しに着火してみると、早速蝋が溶け始めた。 「ひぃッ……!? い、いや……何、するんですか……う、うぅっ」  目の前で蝋燭に火を灯されて、逃げ場のない守からすればそれだけで十分に恐怖させることができたようだ。それもそうか、火というのは人間の生死に関わるくらいの弱点の一つだ。  AVの見よう見真似で、高い位置から垂らす。肩の辺りに、改めて奴隷の烙印を押した。 「ひぎゃあぁぁああああっ!! 熱いっ! 熱いいいいいっ!!」 (熱い痛いきつい苦しいもう嫌ああああああっ!!)  なんだ。低音でも熱いものは熱いのか。……まあ、普通に考えれば火を使っている訳だし。不始末をすれば火事にもなるし。  大袈裟すぎると思っていたが、守の反応、心の声、どちらも本気で苦しがっていた。 「う、お。なんだコレめっちゃ締まる。スゲーぞ。もっとやってくれよ想ちゃん」  悶える守とは正反対に、柳は一番風呂に入ったみたいに恍惚とした顔をしていた。  気持ちはわかる気はする。相手が嫌がり、苦しむほど、身体も心も満たされる。それがクラブの連中。……いや、もう俺達……なのかもしれない。  火傷をさせるつもりはないから、自分なりに慎重にではあるが……どこにどのタイミングで垂らされるかの主導権は全て想悟が握っている。 「ッ!!」  ちょっと休む為に手を止めただけなのに、守が息を呑む。また垂らされると思ったのだろう。想悟の手元から目を離せないでいる。 「そんなにコレが欲しかったのかよ?」  うそぶいてみせると、守はぶんぶんと首を横に振った。そして、涙を流しながら「お願いします、許して」と何度も何度も乞うてきた。  ここまで嫌がるとはよっぽどキツいらしい。ただ、こちらからすれば緩急をつけた責めをすればいいんだと学んでしまうことになる。  まったく、本当に守は……扱いやすいのかそうでないのか。いい加減にしろと言いたくなるような愚かさだ。  それに、さっきは新たな感覚に驚いていたようだが、それが止むと少しは慣れた後ろの快感を意識するようだ。 「う、ふぅ、はぁっ……や、やめ、てぇっ……やめてください……お願いしますっ……! もうつらくてつらくてっ、狂いそうなんですぅ……!」 (嘘でしょ……嫌っ、あんな蝋燭なんかで痛くされながら犯されるなんて、身体がおかしくなりそう……) 「別に狂っても一向に構わないけど?」  言いながら震える守の肌にさらに深紅をこぼす。  いちいち咆哮されるのはうるさいが、連続して垂らしてみたり、少しの間を置いたり。そうして辱められる守の様子を見ているのは実に愉快だった。  手足、胴体、性器に近い部分にまで、身体中に蝋が垂れ落ち、守の白い肌は真っ赤に染まっていった。  緊張と興奮からか、こちらもじんわりと汗が滲む。そんな想悟に、柳はどこか遠い目で守を眺めながら笑う。 「人間っつーモンは醜いだろ? なぁ想ちゃん」  甘さを含む言葉に、想悟も自然と声が出てしまう。 「ああ……すごく醜くて……綺麗だ」  矛盾した感想だが、想悟は素直にそう思った。日焼けをしていない肌に浮かぶ、真っ赤な麻縄と蝋。なんて芸術的なんだろう。  守にも今の自分の姿がいかなるものか見せてやりたいくらいだ。まあ、本人はとてもじゃないがそれどころではない。 「熱──ぃッ! あうっ、痛い……っ! も、もうやめてくださ……あぁああああああッ!」  ボタボタと垂らすたびに蝋が重なっていく。守は少しでもこの拷問から逃れようと身体をくねらせるが、結局は全て受け止めるしかない。  しかしそんな無様な反応がたまらなく、想悟は正直もう勃起していた。 「ちょっと……抜いていいかな」 「おお、精が出るな。ご自由に」  未だ守を犯し続けている柳の了承を得て、想悟はジッパーを下ろすといきり立った怒張を取り出した。  これ以上ないくらい大きくなっていて、反り返るほど勃起していて、脈打っていて、我慢汁も糸を引いている。今にも弾けそうなほどギンギンだ。  揺さぶられる守の前で、想悟は気にも止めず手淫を始めた。守は自分で扱くこともできないのに。 「見ろ守! お前のっ、どうしようもない無様な姿をオカズに扱くのっ……すげえ気持ちいいよ。後ろの奴も同じだ。お前の尊厳を辱めれば辱めるほど、俺達は興奮するんだよ!」  でも守だって俺と同じだ。こんな目に遭っているのに、それにもだんだんと適応しつつあって、飴という名の快楽を貰えれば、素直に感じて。  貞操帯がよく見るとうっすら漏れ出したのか透明な液体に滲んでいる。竿も玉もパンパンになって、一刻も早く出してしまいたい射精衝動ばかりが彼を支配しているのがわかる。 「いや……やだ、やだやだやだっ……やめてぇ……」 「いいから、さっさと快楽に委ねちまえよ。つらいけどイキたいんだろ? ほら、俺だってこんなに……もうイキそうだ」  わざと守のペニスに自身を擦り付ける。その熱は守にも伝わるはず。 (きっ、霧島先生の、すごく大きくて熱くて、ぐちゃぐちゃになってる……こんなオレに興奮してるの……? そう……。そう、なんだ……オレの存在って……こんなにも……情けない……)  そうだ。そんなお前が良いんだ。どこまでも容赦のない凌辱地獄に堕ちればいい。そしてお前もこの異常な状況を愉しめるくらいに、おかしくなってしまえ。 「うっ……くぅ、うう! 出る! 出すからな!」  欲望をたっぷり浴びせかけた。  想悟が最後の一滴まで精を放出してから、遅れて柳も守の中に注ぎ込む。  守は身体に電流を流されたみたいに突っ張らせてのけ反った。その後の呼吸はとても荒々しく、全力疾走した直後のようだった。  射精はしていなさそうだから……なるほど、いわゆる空イキか。鍵を外して、シャワーを浴びさせている時にでも、彼も手淫に耽ってしまうかもしれない。 (こんな風に犯されて……射精されちゃった……でも、オ、レ……あぁ……気持ち良かった……)  疲労でぐったり俯いた守の心が、意外にも素直に感想を口にする。それはそれは良いことで。  想悟も気に入らない柳に協力を仰いだあげく、あまり成果が見られなければ損でしかない。内心安堵した。  柳が縄を外している間に、想悟は鍵を。こなれている柳は手を動かしながら話しかけてくる。 「なかなか才能あるぜ。正直最初はオレもあの爺さんの息子だってあんま信じられなかったんだけどさ……血って言うの? たぶん想ちゃんにもあるよ、他人を支配して思い通りにする力ってヤツが」 「…………俺は俺だ。誰にも文句は言わせない」  興奮のあまり震える声音だったせいもあったのか、あくまでからかおうとしていたらしい柳が言葉に詰まった。たぶんこいつは、もうオーナーの話も神嶽の話もしてこない。  つまらなそうにはするものの、想悟の闇を感じとったのか。それ以上は何も言ってこなかった。  部屋には守の官能に満ちた激しい息遣いだけが響いていた。

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