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一之瀬守編9-2 ※和姦
仕事が終わってから、久しぶりに自宅へ帰った。それも守を連れて。誰に見られるかもわからないので、電車は避けてタクシーを使った。
恋人でも、友達でもない、同僚にしたってまさか性奴隷扱いする人間なんかを部屋に上げるだなんて想像もしていなかった。こちらは守の部屋に一方的に押し入ったのだから、おあいこかもしれないが。
「わ……素敵な部屋」
上がるなり守は目をキラキラとさせた。デザイナーズマンションである以上は、守の年季の入った部屋よりは芸術心がくすぐられるのかもしれない。
お互いに荷物を置いていると、守は律儀に床に正座している。上目遣いで見つめてくる様はまるで次の命令を待っている犬のよう。
「とりあえず飯食いたいんだけど」
「はっ、はい! それもそうですね」
クラブのせいで自宅に帰るのもままならなくなったから、買い置きの食材なんてない。
コンビニで買った弁当や惣菜を袋から出して準備していると、守はパックのご飯を温めようと、電子レンジ前で格闘している。
大学時代からの一人暮らしだと言うから、家電も守が持っているものとは勝手が違うようだ。操作に手こずっている。
「やらなくていいから座ってろ」
「え、でも……」
「いいから」
「はい……」
強引に守をリビングに追いやると、箸と守の分の飯を渡して晩飯をかっ喰らい始める。
無音ではどことなく気まずいからテレビを点ける。たまたま映ったドラマは学生の中でも人気の甘酸っぱい恋愛ものだった。今ばかりは無性に腹が立って即座に無難なニュースにチャンネルを回した。
「おいしい」
こちらの気も知らないで、守は場に合わない笑みを浮かべた。気味が悪い。
なんだよこれ。初々しい同棲カップルか。くだらない。ため息に苛々が乗ってしまった。
「霧島先生……? お口に合わないんですか……?」
「……別に。普通」
会話という会話もなく、黙々と食べ進めるのはクラブに居る時とそう変わらない。気が緩むことがないのだから、腹なんて大して満たされない。
けど守はひたすらニコニコしていて……。
「何がそんなに楽しいんだよ!!」
遂に箸をテーブルに叩きつけるようにして想悟は立った。
それでも守はきょとんとした顔で小首を傾げるだけ。どうして想悟が怒っているのかも、守の何が想悟を苛つかせているのかも一切わかっていない。
(何が……楽しくは……ないよ……? けど、霧島先生といる時間が増えれば、それだけ兄さんのこともわかるかもしれない。それに……やっぱりオレは、もう戻れないところまで来てしまっているんだ)
「っ……?」
守のどこにも触れていないにも関わらず、彼の心が聞こえてきた。
なんともむず痒いような、しかし意識をしっかりと研ぎ澄ませて集中していれば前と変わらないこの感覚は何だ……? 幻聴だろうか?
いや、そんなはずはない。これまでに比べむしろ精度はより鋭くなっているはずだ。
では……おかしいのは自分の方か。守が以前よりもずいぶんと心を開いてくれるようになったから、ということもあるかもしれない。
わざわざノックして、開けてくれるという過程をすっ飛ばして、心のドアを開きっぱなしにさせてしまったのは自分でもどうかと思ったが。
「そんなにしたけりゃ勝手にすればいい」
首根っこを掴むようにしてベッドに引き倒した。
「今までは被害者面してのうのうと生きてきたあんたのことだ。あんたが心底俺を気持ち良くさせようって本心が垣間見れたら、まあ、悪いようにはしねぇよ」
その気の時は嫌というほど抵抗されるのに、気分じゃない時に限って誘ってくるなんて守の魂胆がさっぱりわからない。
調教の成果で本当に性欲が高まっているのか、処理の仕方がわからないのか、そもそもご機嫌取りか……ちょっとその辺りもズレている。
将来恋人を作るかはさておき、人生のパートナーに選択するであろう人間に主体性のない奴は絶対御免だと思えるからこそ、守はきっと奴隷にこそ相応しい。
想悟は自ら服を脱ぎ、守の服も脱ぎ散らかしていく。守は、性に疎いせいか前戯のやり方もさっぱりのようであった。
とりあえず想悟の弱点を刺激しようと手でやわやわ揉み込み始めたが、それくらいじゃとてもじゃないが足りない。
「俺まだ勃起もしてねぇよ?」
「あっ……あぁ、すみませんっ、次は、もっと丹念にやりますからっ」
(どっ、どうしよう、全然上手くできない……先生に怒られちゃう……あ……そうだ、手で駄目なら口も使わないと)
焦った守が、まだ柔らかい逸物をいきなり口いっぱいに含んできた。
「っ!」
それには想悟も驚きつつ、あまり混乱しないよう努めることにした。
「ごめんなひゃい……もっろ、舐めまふぅ……上手にやりまふから、見へへ……」
「……そう。わかった、ちゃんと見てるよ」
「はいっ……」
そう言って舌を動かし始めた守の髪を撫でる。
見下ろした先の彼は、闇雲なやり方ではあるが、かえって素人っぽい様がとても見応えはあった。口元は唾液でベトベトだし、根元を扱いている手もいつもより熱がこもっている。
もちろん、全く感じない訳でもなかった。次第に守の口内で、むくむくと鎌首をもたげてくる息子。それは肝心の守も、気付かざるを得ない。
「ぷはっ……きもひ、いいれすかぁ?」
「……まあまあ」
「んっ……良かっふぁ……」
今まではフェラでさえも全く上手くなかったのに、今日ばかりは巧みに愛撫してきた。どこで覚えたんだ……と言うより、普段がただやりたくなかっただけかもしれない。
それが今夜は一転して奉仕してくれている。なんとも言えず胡散臭い態度は気に食わないが、まあ、守がいつまでも消極的でいるのも飽きが来るというものなので、多少の不満は構わない。
先っぽを大きな動きで舐め回し、口を窄めて吸いついたりも。まるで男性ホルモン臭さえ嗅いでいるかのようだ。
自分で教えたことも含め、クラブ会員に言われたんだろうなというテクニックさえ使ってくる。
「く、っ……出す……からなっ……」
射精宣言をしても口を離すかと思いきや、頷いただけだった。静かに待っている。
「くふぅっ……! ん、んぐ、ぶうっ!」
守の口内に大量に放たれる精液。思わず吐き出すはずのそれだって、少し苦戦はしながらも、最後まで飲み込んだ。
言葉だけじゃない、行動からして打って変わって違う守。
「んぷッ……しゅご、いぃ……熱くて臭くて溶けそうだけどっ、癖になりそう……」
とろけそうな倒錯した快感に溺れている表情。
「癖になりそう……ね。じゃあ、このままケツでもザーメン飲めば」
「っ……! そ、そうですね……えへ……」
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