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一之瀬守編10-2 ※豚姦

「あうぅぅぅーッ!」  クラブのショーでは、好色な会員共が色白の守の胴体を鞭で捉えていた。  四つん這いに縛られて動けないのをいいことに、欲望に任せてビシバシと高く突き出した双臀を打っている。そのたびに守は背を仰け反らせて身悶えた。  しかし次の拍子には、守は息を絶え絶えとさせながらも、鞭を持った男に縋るような態度を見せる。 「あぁっ、やめないで……もっと打ってください……」 「ハッハッハ、ずいぶんと欲張りさんになったものだね」 「いいんです……オレは、最初からこうなるべきだった……自分の気持ちに嘘をついていただけなんですっ」  やはりこうして、言葉からも自ら肉欲を求めるようになっている。つまり目的を達成したことになるが──どうにも腑に落ちない。 「何か問題でも?」  眉をひそめて彼を見つめる想悟に鷲尾が話しかけてくる。 「あいつ……どこまでも逃げてやがる……」  表向きはどれだけ甘美な台詞を吐いていようが、それはきっと心からの言葉ではない。その証拠に、想悟が心を読めば、 (苦しくてたまらないけどこれでいい、これでいいの、オレが無様に嬲られていれば今日もすぐに済むんだ)  追い詰められたが故の逃避だ。守はただ残酷な現実から逃げているだけなのだ。そうして、最後の一線だけは守ろうとしている。  逃げて、逃げて、逃げ続けて……いったいその先に何があると思っているのか?  いや、目の前のことしか考えられない守のことだから答えなんていつまで経っても出ないだろう。  きっとこれでは駄目だと想悟は頭を横に振った。心から隷属させなければいけない。 「……馬鹿にしやがって……」  クラブを、想悟も欺こうとする守の言動に、猛烈な怒りさえ覚え、思わず爪を噛んだ。 「それでは、どうするおつもりですか?」 「絶対に逃げられないくらい貶めてやればいい」  自分でもゾッとするほど冷ややかな声音だった。  お愉しみ中であった会員に断りを入れると、鷲尾達に命令して、事前に待機ささていたあるものを持って来させる。  急遽会員参加型ではなくなったが、そのようなトラブルも調教過程ならではのようで、不満には思われずに済んだ。  あの動物だらけであった場所から、守にぴったりの一匹を選び、檻を舞台に移動させた。  今回守の為に用意したのは、元気な牡豚──なのだが、クラブで飼われているものなど、要するにそういう目的がほとんどだ。想悟は豚の股間をじっと見つめ、改めて不快感を露わにした。 「……ほんと、可愛い顔して気持ちわりぃ形してるよなぁ」  こんなにも愛らしい子豚ちゃんのペニスさえ、生き物なのだから仕方ないのか、グロテスクこの上なかった。  人間で言う亀頭部分にあたる先端が螺旋状で、ドリルのような珍妙な形をしているし、それに、ずいぶん長く、大きな睾丸。これが交尾をする際に彼らなりに効率化させた進化らしい。 「今からこれに犯させるのですよ? 感想はそれだけなのですか?」 「……うん。それだけ」  別に自分に何ら被害はないのだから、どう思おうが勝手だ。  これの相手をさせられることになる守にとっては、どんな怪物より恐怖かもしれないが。 「では、今宵のディナーは豚肉にしましょうか」 「動物はいいや……野菜も肥料が、なぁ……明日までメシ抜きにするよ」  肥やしを直に見ただけならまだマシで、クラブで提供される野菜や果物の土の中には実は多くの人間がミンチにされて埋まっていると聞いた。  そこですくすく育った食材を口にするのは、どんなに素晴らしく高級な料理でも、まるで間接的に食人をするようで吐き気がする。  そういう訳でいつも外で買ったものや、我ながらお世辞にも美味いとは言えない手作り弁当を持ち込んでいた。ずっとそうもいかないので、いつかは慣れねばならないのかもしれないが。  丸裸に剥かれたままの守は、そんな二人の会話などろくに耳に入っていないらしい。何をされるかわからず、ただただ震え、怯え、しかしどこか恍惚とした期待のような吐息も漏れる。 「あ、あれ……もう、終わり、なんですか……?」 「いや、むしろこれからだ。ここまで耐えたあんたには特別な相手をしてもらおうと思ってな。ちょっと長くて重くて……まあ、つらいかもしれないけど、あんたなら余裕だよな」 「ぅ、ウ、ぐぅ……は、い……」 (……そっか……つらいんだ……つらいことされて、オレ……きっとまた感じる……)  そうだと良いがな。いや、そうでなくては会員共にとっても面白味がないと言うものだ。  守の胸の内などいざ知らず、檻から放たれた豚はスタッフによってその短い四つ足で匂い袋を嗅ぎつつ守の元へ寄った。匂いの訓練はできなくもないが、やはり難しいという。  だが、それが自身の役目だとでもいうように、守の中へと慣れた様子で自身を埋め込んでいった。  本当に人間を犯すことに特化して調教されているのか……生で見ると何とも残酷で、もちろんこいつが特殊なだけの話だが、いつもこんなことが可能である生き物を食べていたのかと思うとどうにもその時ばかりは食欲はなくなる。 「ふッ……ぐ、ぁあ、なに、これ……ひ、人じゃないみたい……うぐぁあぁ……っくぅ……」  当の守は顔を歪ませて豚チンポに苦戦していて、まだ感じる様子はない。

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