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凪誠太郎編5-1 ※乱交

 誠太郎を初めてクラブへ連れて行った日から数日が経っていた。  想悟との約束通り、誠太郎がクラブのことを外部に漏らすことはなかった。  だが、やはり俗世離れした施設を見て、彼の中で感動や興奮はあったらしい。二人きりになると、もっぱらクラブの話題で持ちきりになった。 「ねえねえっ! 次はいつあそこへ行くの?」 「そんなにクラブが気に入ったのか?」 「うん! だってね映画みたいに豪華なところだったでしょ、それにすごく気持ちよかったし面白かったんだー!」  感想はそれだけか、と言いたくなってくる。  蓮見に抱かせたことについてはまるで気にしていない。むしろいつもと違う状況でのセックスを心の底から愉しみ、非日常的な快楽を感じることができたようである。  先日の“お試し”では見事合格だった。なら次は、いよいよ会員達へ奉仕させることになる。  意外と早かったな、なんて思いながら想悟は鷲尾へ連絡を入れた。これが上手くいけば、想悟もクラブから解放される希望が見えてくるはずだ。  クラブへ向かう車内で、想悟は誠太郎にこれから行われる品評会の説明をした。まず一つ、冒頭では必ず会員達へ挨拶をすること。不特定多数の男共と蓮見としたようにセックスをすること。彼らの求めることは絶対で、反抗は許されないということ。  端から聞けば異常な命令だが、誠太郎は何の問題もないと言うかのように頷き、後部座席に座った想悟の隣で子猫のようにゴロゴロと甘えていた。  クラブについた二人を迎えた鷲尾にも、誠太郎はハイタッチで挨拶を済ませる。  このクラブへ凌辱目的で連れ込まれた人間の中に、彼のように自ら志願し、しかもこんなにも楽しそうにしている者なんていなかったはずだ。  けれど鷲尾は驚く様子はなく、どんな人間への扱いも慣れているのだなと感じた。もしくは哀れな生贄などにさほど興味を持たないのか。性奴隷に人権はないとでも言いたげな鷲尾のことだから後者が正解だろう。 「蓮見から報告は受けておりますが、ふぅん……確かに、存外面白いタイプですね。これはどうなるか俺も楽しみになってきましたよ」 「本当にこいつで大丈夫そうなのか?」 「ご心配には及びませんよ。会員様は何より珍しいものがお好きでいらっしゃいますから」 「……まったく悪趣味な野郎ばかりだな、このクラブは」  誠太郎を選んだのは自分だが、相変わらずのクラブの需要の広さにはむしろ感心を覚えるほどだ。金と欲を持て余し、かつ裏社会に心までどっぷりと浸かった人間に、価値を見出せないものはないのだろうか。  今宵誠太郎を連れて行くのは、VIPしか入ることのできない部屋だ。誠太郎は想悟と腕を組み、スキップ混じりに長い廊下を歩いた。 「ふわー……」  待っていた会員達に拍手で迎えられ、誠太郎が小さく声を漏らした。驚き半分、喜び半分といったところだ。  普段から学園で皆の弟みたいに扱われている誠太郎は、こんな風に特別扱いをされるのが好きだ。  心を読もうと手のひらを誠太郎の頭の上に置く。 (なんだろー面白い仮面のおじさんがいっぱいいるよー? でもみんな笑っててなんだか楽しそうだなー僕も楽しい!)  自分に向けられている下卑た笑みをもポジティブに変換し、誠太郎は集まった会員達へニコッと笑いかけた。  ここへ来てしまった以上、想悟も誠太郎を調教する者として、あるいは死んだオーナーの後任候補としての務めを果たさねばならない。ゴホンと咳払いをして覚悟を決め、よそ行きの低い声音で話しだす。 「誠太郎、皆さんわざわざお前の為にこうして集まってくださったんだ。きちんと挨拶をしろ」 「そうなの? えっとおぉ……」  誠太郎が想悟と会員とを交互に見やり、うーんと考え込む。 「……僕は、凪誠太郎、だよ! おじさんたち、今日は僕の為に集まってくれてありがとう!」  本当に想悟の話を聞いていたのかと思うほどに、何の躊躇もなくタメ口で言い放つ誠太郎。  そんな彼を見て、想悟は深いため息が出た。俺はきちんと挨拶をしろと……いやしかし、それも誠太郎らしいと言えばそうなのかもしれない。  会員はニヤニヤと黙って頷く者もいれば、世間知らずで可愛らしい子だと褒めてくれる者もいる。少なくともこの場で誠太郎に不快感を抱いた会員はいないようだ。  このクラブの人間にとって誠太郎は見世物で、言うならば動物園のパンダのような存在。動物と違うのは言葉で意思の疎通ができるということくらいだ。そんなものを見に来るこの変態共は、ずいぶんと器が大きいらしい。  そもそも、最下層の惨状のごとく、クラブ自体が規模の大きな見世物小屋のようなものなのだ。 「この通り、彼はまだまだ未熟な奴隷ではありますが、今後皆様方のご指導ご鞭撻の元、いかようにも変貌する伸びしろがございます」 「……わ、私の指導不足が原因の非礼をお許しください。皆様どうか、温かい目で見守っていただけると幸いです」  鷲尾にフォローされて、想悟も慌てて頭を下げる。こんな訳のわからない男達にへりくだらなくてはならない状況にプライドがチクリと傷付いたが、今は耐えなくては。 「それでは、今宵の宴を始めましょうか。ささ、皆様どうぞご整列ください」 「誠太郎、こっちだ」  鷲尾がショーの開幕を宣言し、想悟は誠太郎の背を押して会員の前へと差し出した。  この日の為に大金を積んだのであろう下世話な男達がずらっと誠太郎を取り囲む。想悟は心を読む為に誠太郎の傍にいることを許された。 「服を脱げ」 「はーい!」  誠太郎は言いつけ通りにその場で衣服を脱ぎ散らかしていく。  やがて裸体がさらされると、おおっと歓声が上がった。年齢に不相応な愛らしい顔と肉体に、会員達の目は釘付けだ。皆明らかに性的興奮を覚え、息を荒げたり、ズボンの前を膨らませている。 「誠太郎、こう言え」  そして次に必要な言葉を耳打ちする。 「うん? ……わかった! えっとえっと、今から僕はこの身体で皆さんにごほーしします! 口も手もケツマンコも自由に使って思う存分性欲処理してください!」  誠太郎はニコニコ笑って言い放った。自分がどんなに卑猥な言葉を言わされているかもわかっていないだろう。 「俺はここにいてお前を見ていてやるからな。しっかりやるんだぞ」 「ほんと! わぁいっ! 僕頑張るね!」 (せんせーが傍にいて僕を見てくれる! 嬉しいな嬉しいなっ! よぉーっし、いっぱいごほーしするぞー! おー!)  想悟が己の頑張りを見届けてくれると思うと、俄然やる気が出るようだ。誠太郎は気合いを入れるように両手で拳をつくってみせた。

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