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凪誠太郎編9-2 ※男体妊娠描写、ディープスロート
母体はともかくとして、自分もこんな風にして、このクラブで生まれたのだろうか。どうしてここまで生かされたのだろうか。
そして、どうして今さらまたクラブに関わることになったのか。全てが不思議で仕方がならない。
「俺……どうして生まれたんだろうな……」
口をついて出た疑問には、
「それがあなたの使命なのでしょうね」
と、鷲尾があくまで他人事のように言った。
使命。人を不幸にすることが? こんな残虐な行いに慣れることが? 醜い破壊衝動を隠して善良な霧島家の中で育ったことが、全て?
それならやはりなんて自分勝手な輩なのか。人の人生をなんだと思っているのか。
「……せんせー」
それまで珍しく固く口を閉ざしていた誠太郎が、ようやっと口を開いた。
誠太郎も言葉が出ないほどに、目の前の現実に驚愕していたようだ。
「僕、前に言ったでしょ。せんせーは、望まれて生まれなかったの? って」
しゅんとしたように俯き、泣きそうな顔でこちらを見上げる。
「あの時……せんせーすごく怒ってたから、僕ほんとにひどいこと言ったと思って、ずっと後悔してたの。せんせーはねきっとね望まれて生まれたんだよ。だって子供のことが嫌いなお母さんなんていないから」
傍らで話を聞いていた鷲尾は呆れたように鼻で笑っていた。
けれど今の誠太郎の言葉はすっと胸に沁み渡ったような気がした。生まれに固執してきたけれど。悪魔のような父親のことばかり考えてきたけれど。
──そうだ、母親はどうだったのか。好きでもない男との子供でも、せめて情はあったと信じたい。決して忌み子などとは思われていたくはない。自己嫌悪はもうたくさんだ。それも今となっては、真実がわかることはないけれど。
──子にとって母はどんな人間でも神同然なのだ。そして、それだけの想いで母も子を生んでいるのだ。
顔も見たこともない母親と、目前の機械と化した人間を勝手に重ねては、想悟の目に一筋の涙が伝った。
「ならお前もこいつみたいになれるのか? 人間辞めて……物みたいに……酷い扱いを受けてもいいって言うのか?」
誠太郎には泣いていることを悟られまいと、顔を背けて言った。誠太郎は、そっと手を握ってきた。
「……うん。僕、せんせーが望むなら、それでもいい」
(ううんほんとはすごくこわいけどでもせんせーのためなら僕はぜんぶしあわせに思えるからだいじょうぶだよ)
言葉とは裏腹に、心の声も、誠太郎の小さな手も、無意識だろうが震えていた。
誠太郎は不特定多数に輪姦されることくらいなら屁でもないが、肉体を傷付けられることが恐怖であると、凌辱の過程で想悟は知った。だからこれは誠太郎の意志をも固める為の行動だったと言っても過言ではない。
「覚悟は……あるんだな」
「うん。僕がせんせーを勝手に好きなだけだから、せんせーは僕のこと好きじゃなくても、いいんだ」
「誠太郎……」
「僕言ったよね、せんせーの奴隷ですって」
「……そうか。……そう、なんだな……」
それ以上でもそれ以下でもない。今の誠太郎は自身の立場をしっかりと理解している。
想悟が誠太郎に対し好きも嫌いも関係ない。命令すれば何でもやってのける俺の初めての奴隷。何故だかとても感慨深いものがあった。
「あ。この人みたいになっても、いいよ。せんせーの赤ちゃん産めるなら!」
「俺は子供は欲しくないんだけどな……」
想悟はずっとずっと誠太郎を舐めていたのかもしれない。彼は本気だ。想悟の為なら死んでもいいとさえ思っている。
そうだ。誠太郎の良い部分も悪い部分も、全部等しく見てやると、責任を持つと決めたじゃないか。
「奴隷になれ」と言ったあの日。至極簡単に命令したつもりでいたけれど、支配者になりきれていなかったのはもしかすると自分だったのかもしれない。
他人の人生を己が手で変えてしまうということは、こんなにも悩み苦しむことなんだ。それに耐えうる精神力が必要なんだ。相手が誠太郎だからこそ、気付くのに遅れが生じていたようだ。
でもきっと、もう大丈夫。
想悟は服の袖で涙を拭い、誠太郎の華奢な肩を抱き寄せた。
やはりあの一件から、覚悟が決まったような気がする。
誠太郎を拷問する手にも熱が入り、冷静というか、以前よりも感情的ではないというか……そんな風に接することができるようになっていた。
もはや感覚が麻痺しすぎていると思うが、快楽重視の調教では彼を満足させるだけで仕方がないので、暴力や恐怖を煽るもの、命令されて誠太郎が焦るようなことばかりを選んで行った。
誠太郎は言われるがままにディープスロートに挑戦してはいるものの、やはりそもそものサイズに無理がある。そのくらいわかってやっているのだが。
「ん、んぐぐぐゥ……ゲホッ、おぇっ……」
「まだそれくらいしか呑み込めないのか?」
「ん……ふぁい。だってせんせーの、大きいから……」
「別に俺はいいよ。けど、他のお客様だったら、激怒するかもしれない」
「え! そ、それは駄目だよね……ごめんなさいっ」
(おじさん達に失礼なことしたら、せんせーにも悪いよね……僕のせいでせんせーが嫌な思いをするのは、絶対にやだ)
「で、でもね、今度は頑張るから!」
「そう言ったの今日だけで何度目だよ……」
とは言うものの、たぶん最低限の常識を持つ人間であれば、やればやるほど精神が疲弊し、全てを放棄したくなってしまう。
ところが、誠太郎はあくまで「練習」なのだとすら割り切って、想悟の無理難題を苦戦しつつも泣き言の一つも言わず挑戦してくる。こっちが面倒なくらいに。
誠太郎は深く息を吸い込んで小さな口を最大限まで開くと、想悟の長大なペニスをどんどんその口内に咥えていく。
顔を真っ赤にし、眉を八の字にし、唾液を流れるままにして……苦しさは手に取るようにわかる。
「んぐッ! んむぅっ……か、は、ッ──!」
亀頭部分が口蓋垂に触れた。本来ならそれだけで脊髄反射で吐き気を催すだろうが、誠太郎は今までの経験からかそれをものともしなかった。
ならもっと奥に……入ってはいけはいところまで……。
「おぼぼぼぼぼッ! げふぅっ、ぐひぃっ……!」
根元まで誠太郎の口に隠れるくらい、つまり食道の方まで入ってしまったということになる。
幸い歯は立てられていないが、初めてのディープスロートにしては上出来すぎる。
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