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凪誠太郎編9-3 ※尿道責め、エネマグラ

 褒め称える代わりに、遠隔操作のスイッチを起動した。 「ひぃァアアアアッ!? せんせー、だめっ、おちんちん駄目ぇっ!!」  誠太郎の尿道責め、それに伴う拡張も進んでおり、彼の鈴口には今、遠隔バイブ機能のあるシリコン製のアダルトグッズが挿入されている。最初と比べれば、ずいぶん太くて凶暴なイボがあるものが入るようになったものだ。  それでも、身震いして歯をガチガチと鳴らしながら悶えている。ごく狭い隙間からカウパーがじわっと溢れ出している。  感じているんだ。こんなもので。初めはただ怖くて仕方なかったもので……呆れた色情狂だ。 (おちんちんに入ってるこれこわいのにっ、すごく感じちゃうっ、でも良いんだよねせんせー僕が苦しんでると褒めてくれるもん)  そう、もちろんそれで良い。だから褒める。  ただ、誠太郎が苦しみもがく姿を見るのをたまらなく心待ちにしているのは、どちらかと言えば会員である。  だから褒め方も、仕事としてドライでなければ。恥を恥とも思わない誠太郎だから、羞恥心を煽るような責め方も別にいらない。今はお互い素直で良い関係を築けていると思う。 「っぷっ……はぁぁ……しゅごっ、しゅごいいぃぃ……お尻でするのとも、全然違うね……」 「そういうもんか」 「うんっ……。身体の内側から、熱いのがビリビリって。射精したくてもできなくて……むずむずするのが波みたいにばーっていっぱい来てまた引いてくの……」  わかるようなわからないような感想だ。同じ男ながら達したことがないのでわからないけれど、ドライオーガズムかそれに近い快感なのだろう。  勃起が大丈夫ならと、尻には一般的にエネマグラと呼ばれる三叉に分かれている機器の真ん中の太めの部分を挿入した。ローションの滑りと挿入口が小さいことから、現在の誠太郎には難のないはずだが。 「ひァ……!? せんせー、これなに!? なに入れたのっ!?」  当然、捻じ込まれた異物に疑問を持つ誠太郎。 「あー、まあ、エネマグラってやつ」  元は消耗品である大人のおもちゃではなく医療用でもあるから、結構いい値がするらしい。尻から入れて前立腺をマッサージすることで、男の機能改善に役に立ったり、時には頻尿予防にも効果があるとか。  本来は快感は二の次で、検査や治療の為にどうしても男の内側の急所を弄られることになり、結果勃起してしまって恥ずかしい思いをした人間もよくいるという。 「ぼ、僕まだ頻尿じゃないよぉ……おちんちんも自然に勃つし……」  やっぱり医療的観念から考える誠太郎。 「そうじゃなくてさ。単にこれは、お前の男としての機能向上を助けてくれるものだ。傷付けるものじゃない」 「う、うん……」  納得した誠太郎だったが、徐々に内側の異物に意識が向いてしまうようだ。 「んぅっ、ふあ、あぁっ、なに、これぇ……!? 勝手にうにょうにょ動いてっ、僕の大事なところ掻きむしってるよぉ……」 (せんせーは、触ってない……でも遠隔操作とかじゃない……すごいっ、変な感覚……)  ハンズフリータイプなので想悟は一切手を出していないのだが、誠太郎自身の蠕動運動で刺激してしまうらしい。実際、誠太郎のアナルがエネマを呼吸に合わせてキュウッと窄めていて、見ている分には実に滑稽で面白い。  それに、やはりこちらが何もしていないのに誠太郎が悶絶している姿は、圧倒的な支配感に包まれる。 「はぁっ……せん、せぇっ……これ、しゅごすぎりゅぅ……。おちんちんも、お尻も、いつもと違うよっ、こんなに機械に弄られてるのにっ、今の僕っ、すごく熱い……」 「そうだろうな」  クーラーの効いている部屋でも、彼の火照り具合は一目瞭然だ。むわりと汗ばむ肌に、潤んだ瞳。機械で責められるのは、人肌を好む誠太郎にとっては実は最も嫌な行為かもしれない。  でもそれも感じる身体になってしまった、俺がした、だから仕方がない。 「もう限界?」 「んっ……んんっ……!!」  誠太郎は必死に首をぶんぶん縦に振るだけだ。 (もっ、もう、ずっとイキたいのっ……むしろイッちゃってるのっ……止まらないの、つらいのっ……!) 「そっか」  ギリギリのところで尿道に挿入していたバイブを一気に引き抜いてやると、誠太郎は声にもならない叫びを押し殺すように唇を噛んで耐えていた。 「ンッ……ぐ、うぅ……ッ!! お、おぉっ……んほぉ……」  その直後、エネマグラの刺激も最高潮になったのか、身体をビクビク震わせて恍惚とした表情を見せた。  栓を抜かれた鈴口からは、白濁というほどではない、小水ほど薄くはない、粘り気のある液体がねっとりとこぼれ落ちて床を汚した。射精でも潮吹きでもないな、これは。  空イキする誠太郎は何度も何度も悩ましげな深い吐息を絞り出して、あまりの快感に表情を歪め、それが落ち着くまで繰り返し想悟に縋り付いて耐え抜いていた。  いつものように互いを清めて、身支度をする。何事もなかったかのように痕跡を洗い流して、家に帰してやれば元通りだ。  まあ、依存が激しいことに関しては変わりようがなさそうだが。 (せんせーの調教、ちょっと大変だけどやっぱりいつも楽しいな) 「どうして俺だとそんなに楽しいんだよ」  呆れたせいかついうっかり心へ返事をしてしまった。しかし、そこで我ながら妙なことに気付く。  ……今、誠太郎を触っていない。もちろん間接的にもだ。なのに心が聞こえる。この感覚は……そう……まるで何もせずとも自然と人間の声が聞こえていた子供の頃を思い出す。  けれど、だからと言ってこのクラブにいるのであろう連中の声が聞こえることはない。こんなことは今までになく、少し考え込む。 「好きな人といるからだよ。えへへ」 (見てるだけで……とか、声を聴いてるだけで……とか、そんな感じなの。お父さんとお母さんも、すっごく仲良しなんだ)  やっぱり……誠太郎だけを、読むことができている?  そうとしか考えられない。でもそれにしたって、何もしていない。  ……何もしていない? まさか。奴隷指導が始まってから、してるじゃないか。「誠太郎の心に深く干渉」することを、何ヶ月も。  これは自分にしか理解不能な原理だが、いつからか読心をやめると、精度は格段に落ちた。だが無理やりにでも使わざるを得ない今なら、昔と同等、いやそれ以上の伸び代があってもおかしくない。進化し続けている。  全くわからないと思っていた誠太郎の思考を把握し、振り回されるどころかきちんと支配者として命令できるようになったほどには。  何事も制御次第。……そうか。そういうことだったのか。  自らの長年の苦悩を一つ拭い去り、想悟は抱いたことのないある種の高揚を感じていた。  読心頼りになってはいけないなんて誰が決めたんだ。生まれつきの能力なら、それこそ使わなければ馬鹿を見る。  もう呪いなんて言わせない。神の悪戯でもいい、これは天からの授かりものだ。

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