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財前和真編3-1

 和真を凌辱し尽くしてからも、想悟の心が晴れることはなかった。  それどころか、一度覚えた若い肉体への暴虐に味を占めてしまったのだろうか、どうにも嗜虐願望は止まらない。  クラブの自室に帰ってからも、あの時のことを思い出して、そしてきっと和真は今頃泣いているんだろうと思うと再び興奮が込み上げ、堪えきれなくなって自慰に耽った。  クラブと言えば、想悟は興奮冷めやらぬままに和真の凌辱データの提出を求められた。あらかじめクラブから盗撮用の小型カメラを渡され、教室に仕掛けておいたのだ。  無論、想悟が持っているだけでは何の拍子に紛失してしまうかわからない。  しかし、確認の為に映像を見た鷲尾からは、またもや上出来だと称賛を受けてしまった。  和真の顔と何をしているかがしっかりとわかり、なおかつ和真の心身に深く傷を負わせた行為。こちらの姿はモザイク処理をするにしても、新たな脅迫材料にもなる。  冷静になってくると、初めて自らの意志で教え子をレイプしたんだという既成事実を重く感じた。けれど、どれだけ考えても罪悪感はない。  むしろ性欲処理ができてちょうど良かったのではないか……そんな風に、やはり自分は凌辱願望のある人間だったのだと再確認できただけ、どこか安堵した部分もあった。  それにしてもここまで良心の呵責がないものかとなんだか複雑だったが、あまり考え込むと余計な思考が湧いて出てきそうなのでぐっと内に抑え込んだ。  今は、これで良いはずなのだ。そう思わねば、とてもじゃないが平静を保っていられそうにない。  ともかくひとまずは、想悟も和真も、試練を乗り越えた。そんなところだった。  教師と生徒という関係から一線を越え、翌日。  和真には、これからも登校して来ないと万引きの映像を世間にばらすと脅迫しておいた。  すると、やはりそれだけは恐怖のようで、言い付けを守って学園には来ていたものの、ホームルームには出席していなかった。今度こそ本当に具合が悪く、保健室で寝込んでいることだろう。  そんな和真の惨めな姿を思い浮かべながら、想悟は教え子を犯した教室で淡々と授業を行っていった。  昼休みが訪れても、和真は教室には戻って来ていない。周りに動向を聞くと、まだ保健室にいるらしい。  あまり塞ぎ込んでしまっても今後に悪影響を及ぼすので、とりあえず様子を見なくてはならないだろうと、想悟は保健室に向かう。  運が良いのか、和真の他には生徒は誰もおらず、教師も所用で出掛けていた。  具合が悪いと言って来ている以上は形式としてベッドに横になっていた和真であったが、せいぜい泣き腫らしているのかと思いきや、持ち込んだ携帯でゲームをこそこそやっていた。  思いのほか元気そうだ。暇を持て余しているというより、ただ気を紛らわせる為だろうが。 「あ、あんた……!」  訪問者が想悟とわかると、和真はギョッと飛び起きた。 「よお。その後調子はどうだ」 「ふ、ふざけんなっ……! どのツラ下げて来てんだよこの変態教師!」  傍にある枕を投げつけ、身を抱くようにして身構える和真。  日中の学園内では接触してこないだろうと思っていたらしく、動揺を隠しきれていない。 「思ったより元気そうで何よりだ。俺の言い付けをちゃんと聞いてくれたみたいだしな」  和真が低く唸る。  和真にとって不利益なものを盾にしているとはいえ、どうにか性犯罪者と化した担任教師を告発する手立てがないか、彼なりに逡巡はあっただろう。  現状ここにいて、誰にも言いふらしていないということは、苦渋の選択をしたのだ。 「それはっ……あ、あんな脅迫されちゃ仕方ねぇだろ……っ? けど、あんたが余裕ぶっこいていられるのも今のうちだからな。俺にあんなことして、ただで済むと思うなよ……」  凄んではみるものの、声を震わせる和真は、ただ強がっているだけだ。おかしくてたまらない。それでこそ和真だ。  想悟も初めての凌辱を経ていくらか余裕が出てきたのか、教え子ごときの言葉に動じることはなかった。  数枚の写真を取り出すと、お返しとばかりに和真に叩きつけるようばら撒いた。  盗撮映像から特に和真の恥ずかしい姿が鮮明に映っている一部を切り抜いて写真にしたものだ。  それが恥辱の証拠とわかるや否や慌てて拾い集めた和真は、血相を変えていた。  衝動的な行動に出てしまったものの、やはりよく考えれば自分のせいで両親の輝かしい芸能生活の足を引っ張ることになるのは御免なのだ。  俳優としての両親は尊敬の対象であり、和真にとってかけがえのない存在。演者を志望しているのも幼い頃から両親の背を見て育ったからだ。 「立場がわかってないみたいだな、和真。お前の今後は俺にかかってる。それが世に出回ったら、お前はもう今までのようには生きていけないぞ。大物俳優の愛息子が万引きの上にホモビデオ出演……ってな。なかなかいいニュースになると思わないか」 「うぐっ……こ、こんなの、いつの間に……」  まだ和真の方も余裕があったようだが、新たな脅迫材料を突き付けられてはうなだれる他ない。 「お前はもう俺の言うことを聞くしかないんだ。惨めに俺に犯される性奴隷になると誓えよ」 「だ、誰が誓うかよっ……! またあんなことするなんて、冗談じゃねぇっ!」 「まだわからないのか? だったら、今日は一から教育してやるよ」 「教育だとっ……」 「ここに座れよ。それとも本当にばらされたいのか? 俺はそれでもいいぞ。今から全校生徒に吹聴してきてやるよ」 「ち、ちょっと待てよ! そ、それはやめろ……ぐうぅっ」  慌てて想悟を引き止め、口惜しさに小さく唸った和真。  どれだけ嫌でも、脅されている以上は従うしかないのだ。和真も自分の身が大事だからだ。

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