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財前和真編6-2 ※羞恥、ハメ撮り

「……まあいいや、一応……約束通り家には帰してはもらったし。じゃあ、もう俺の話は終わりだから」 「は? 誰がこのまま帰すっつったよ」  和真が三年前のタブーの話なんかしてくるものだから、こちらも目先の目標を忘れそうになっていた。  言いたいことを話して帰ろうとする和真の腕を掴む。 「この前撮られたもの、忘れてないよな?」 「え……な……まさかっ」  先日のクラブでの凌辱を記録した映像はスタッフ達が編集するとか言っていたが、それは仕事が早いことに当日の内に行われたらしく、ディスクにコピーされたものを渡された。  そう、今後はこれが和真の脅迫材料兼、興奮剤になるのだ。  レコーダーにディスクを挿入する。ポルノビデオさながら、しかしずいぶん高画質・高音質な金のかかった映像が視聴覚室の大スクリーンに映し出された。  もちろん自身の痴態に真っ先に気付いたのは和真だ。 「嘘……と、止め……!」 「それは聞けない話だ」 「や、やめ……やめろっ! なんでこんなことするんだよっ!? 俺を辱めるなら、もう十分だろっ!?」 「いや……もっと確かめたいんだ。和真が正真正銘の露出趣味のあるドMの変態だってな」  スクリーンの目の前の机に突っ伏すような形で和真を押し倒す。  背後から完全に捕まえて、想悟に尻を突き出したまま逃れられない状態だ。 「いってぇな! 離せ! 離せよクソ!」 「しっ……あまりうるさくすると誰か来る。事情を知らない奴なら俺もお前も共倒れ、でもそれこそ学園長にでもばれたら……あとはわかるよな」 「う……っ」  何も知らない生徒や教師に見られてしまうのもたまったものではないが、もしかの世良に見つかれば、彼のことだから行為に参加するなり、傍観者としてさらなる弱味を握られかねない。  とにかく想悟にとって圧倒的に有利になってしまうことは和真でも想像できる。 「で、でも、いくらなんでも、こ、こんなん流しながらしなくたって良いだろぉっ!?」 「お前が嫌がるから良いんだよ。期待以上だったな」 「こんの……変態野郎……これからも俺を従える為に撮らせてたとか、マジ最悪……」 「今は俺とお前、そして口の堅いクラブ連中しか知らないだけマシだろ。これがもし世に出回ったら、写真どころの騒ぎじゃないぞ」  それにはさすがの和真も悔しそうに言葉を噤んだ。  想悟が初めての凌辱の際に撮った写真だけなら悪質なコラ画像だとか理由付けはできるかもしれないが、動画となると偽造は難しい。  というより、手間暇をかけてわざわざフェイク動画を作る意味がない。 「ひ、ひぃ……! あ、ぐッ……」  強引にさらした尻の狭間にさっきからテントを張っていた怒張を捻じ込むと、和真の四肢に抵抗する為か力が入った。 「なぁっ……これ、この……ビデオっ……止めろよ……! ただ犯されるだけならともかく、ハメ撮り見せられながらなんてっ、冗談じゃないっ……!」 (そう……これがあるから感じてる訳でもないし、ビデオがなくたって感じていい理由にはならないっ……!)  和真はとにかくビデオだけはどうにかしてくれ、と必死に訴えている。これだけで効果があったというものだ。  それに、もう何があってもなくても男同士のセックスに性感を覚えてはいるが、やはりより強い辱めに苛まれる状況に置かれた方が、彼は心身共に弱体化する。 『ひっ、ひぎっ、うご、かすなって……! お前ら聞いてんのかよっ! こんなのマジでやだ……う、んんっ』  抵抗しながらも喘ぐ和真の声とあられもない姿は無情にも再生を続け、どうしても和真の目と耳に強烈に焼き付いてしまう。 「けど映像の和真、すごく気持ち良さそうだよなぁ。今もまったく何ともない……訳じゃなさそうだが?」 「う、うぅっ……気持ち良く、なんてねぇよ……!」  これ以上見たくない、聴きたくないというように歯を食いしばって首を振る和真。  お得意の強がりか。そう思うのもつかの間、 (ホントだよな……俺……なんであんなことされてんのに感じてたんだろう……)  ふと、和真の心の声に迷いが生じた。 (今だって……自分のあんな姿を見せられながら犯されて……想悟を悦ばせるだけなのに気持ち良くなって……俺ってば、本当に最低の悪い子だ……)  また。また悪い子だと思い込もうとしている。  何故? どうしてそんなにも悪い子でいることに固執する。生きやすさよりも優先するべきことなのか?  心の声などというのは、どれだけ口では綺麗事を言おうが、本音は醜いものでしかない。  親戚だって、友人だって、教師だってそう。  そんな感情を今までずっと聴いてきた想悟にとっては、和真の心が一向に理解できない。  そんなにも両親の気を引きたいのだろうか。でも、今ここに両親はいない。  それじゃあ、和真がそこまでして悪い子でいる必要はいったい?  演技……いや……最早それが、もう一つの人格として彼を形成している。  誰だって良いところも悪いところもあるけれど、和真のそれは普通じゃない。別人だ。

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