133 / 186

財前和真編6-3 ※羞恥、ハメ撮り

 精神の病で、そんな風なものを聞いたことがある──医者じゃないので断言はできないが、和真はきっとそれに近い。  それもたぶん、後天性の自己分裂。彼自身も半分は気付いているようで、半分は気付いていないことが厄介だ。  悪い子でいれば、何をしても許される。  怒られても、それは悪い子だから仕方ない。  更正なんてしたら誰からも見向きされなくなってしまうから。  幼少期からの過度な思い込みが、彼を悲しくも歪ませてしまったのだろう。  元人格は嫌でたまらなくても、別人格が羞恥と露出を快楽としている。注目を浴びることをたまらなく思っている。  なんてことだ……想悟は頭を抱えたくなった。  それでは、どれだけ凌辱しても彼には届かない。むしろ、悦ばせてしまうだけではないのか。  彼のそれは異常性癖に変わりはないが、それが仇となるとは思いもよらなかった。弱みを握れて嬉しかったくらいなのに。  きっと見て欲しいんだ。罪深い自分を。そして、構って欲しいんだ。  和真の何が嘘で誠か、ずっと考えてきた。  でもある種、全て誠であったら? 世の中二つしかないと思っていたことが全て覆ってしまう。  わからない……やっぱりお前のことが、全然わからない。だから知りたいとも、今は思う。  まるで和真は想悟と真逆の人間なのだ。  想悟は読心のせいで、気味が悪いと思われることが、嫌われることが、怖かった。  だから善人を装って……装いすぎて、ある日抱えていた衝動が爆発した。  表面上は相変わらず強気な態度を見せる和真だが、身体はどうにも嘘をつけない。  股間はそそり立ち、今までにないくらいカウパーを溢れさせていた。ただ適当に犯すだけじゃなく、こんな風に特殊な状況の方が興奮するのは明白だった。 「ぁ、あぁあ、ぐっ……ふあぁっ」  既に先走りでヌルヌルのペニスを扱いてやると、我慢できない甘い声が溢れ出る。  熱くて硬くてドクドク脈打っていて、この分じゃすぐに射精してしまいそうだ。 「すっげえガチガチになってる。いったい何にそんなに興奮してるんだ?」 「知、らね……触んな、って……う、くぅ……!」 「そっか。触らなきゃ良いんだな」  そう言って手を離す。和真がホッとしたのを見計らって、触らずに腰の動きを再開する。 「ひッ、ぐ……! なに、勝手に動いてんだよッ……」 「触るなって言うから」  性行為での腰振りももう慣れたもので、ハンズフリーでできるようにもなってしまった。  力の入れ加減は、やっぱり彼の身体と密着していた方が良かったけれど。今は彼がやめろと言うのだから仕方ない。  性急なストロークができずに、こちらもどうにもイケそうでイケないもどかしさが襲う。  いやその間で揺れる感覚をもっと味わいたくて、抜き差しだけでなく、挿入したまま小刻みに動かしたり、ゆったりと回転するようにしたり。  とにかく和真を、自分を、悦楽の渦の中へ引き込もうとする。  ともすれば、やっぱりたまには強い刺激が欲しくなって、机を掴んでズコバコと抽送を浅く繰り返した。 「や、や、めっ……」 「んっ……? 何をどうやめればいいんだ?」 「ひはぁっ……! ち、チンコ……チンコで、そんな激しく突くのやめ、やめて、くれぇ……」  和真の表情は自分では必死に我慢しているようだが、先の焦らし作戦が効いたのか、いつもより快楽を素直に感じて、とろけそうになっている。  涙声で懇願されては、想悟ももうたまらなかった。 「なぁっ……イキそうな時は、イクってちゃんと言えよ……? そうじゃないと俺……和真がイッてるかどうか、わかんないかも」 「そ、そんなのっ、わか……はうぅっ!」  和真のタイミングなんてわかっている。  伊達に身体を繋げていないし、読心能力だって彼を読むことで進化し続けているはずなんだ。  それを認識していて、絶頂を宣言させる。和真にとってこれ以上の屈辱はない。  激しく肛内を蹂躙されて、ろくな考えも躊躇もできぬまま、和真は想悟の言葉に従うしか選択肢は残されていなかった。 『ガンガン突くなって、んあぁッ、イクイクイクッ、イグがらぁああ……ッ!!』 「ひ、が、ァアッ……い、いくっ……自分のイクとこ見ながら想悟のチンコでイグゥウウウウウウウッ!!」  奇しくも映像とシンクロするように、和真は絶頂を極めた。  ズルリと引き抜いた尻穴からはたっぷり出した白濁が太ももを伝って床にまでトロトロと落ち、息を荒げながらも脱力した和真はそのまま机に身体を預けるしかなかった。  ディスクはすぐに回収し、この部屋で何が上映されていたかはすっかりわからなくなった。  だが、思いつきで和真に手渡そうとする。 「オナりたいならこれやるよ。和真の初主演作。というか、デビュー作がAVってずいぶん身体張ってんなぁ」 「ッ──!! 白々しいこと言ってんじゃねーよクソ野郎! いるか!!」  ディスクの入ったパッケージを真っ赤な顔で投げ捨てる和真だが、もちろんこの一枚ではない。  別にしないが、段ボールいっぱいに詰めて嫌がらせすることもできるだろう。  それはともかく、悪態をつけているということは元人格に戻ったか……いや、もうどっちがどっちやら。  とにかくこれから先は、また別のアプローチも考える必要はあるべきだ。  多重人格の気質があるならば、どれだけ性調教をしたところで何か彼の心で矛盾が生まれるかもしれないし、その逆もしかり。  ただ、現時点で一番に怖いのは、和真自身が心のバランスを崩壊させてしまうこと。  あまり時間はないが、焦っても仕方がない。もう少し和真を観察しよう。  厄介事はなるべく避けたいのだから。

ともだちにシェアしよう!