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財前和真編9-2 ※公開自慰、女装、散歩

 脚をガクガクとさせて、木の幹に寄りかかってなんとか身体を支えている状態だ。耳元に流れるのは全力疾走した後のような激しい吐息。  ──マジで? こんな場所でイッた? 射精した?  和真の反応があんまり良いものだから、想悟も愉しくなってきた。  外に放置して自慰を強要させたのに、まさか本当に勃起して射精するなんて……相当な奴だ。 「鷲尾、ちょっと離れるよ。和真の所へ行って来る」  想悟に何か考えがあるのを察して、鷲尾は会釈したのみだった。  車から降りてそろりと和真の元へ。  和真は当然、想悟の介入を聞いていないから、声が出そうになって慌てて口を引き結んだ。  と同時に、想悟が現れるということは、今夜の辱めの終焉を感じて、ホッと肩を撫で下ろしている。  この程度じゃ足りない。まだまだ序の口だというのに。  蒸し暑い中で一人寒さを堪えるように身を抱く和真に、能天気な声音で声をかけながら手を振ってみせた。 「じゃ、次は散歩しよっか」 「え……!? お、オナニーはしたんだから、これで終わりじゃ……」 「いや、それがお前、思ったより早く射精しちまっただろ? 面白くねぇんだよ。って言っても、公園内だけだから。さすがに公道にまでは出さねぇよ、俺だってリスクがあるんだし」 「いや、でも、散歩って……」 「公園一周したら終わり」 「う…………」  和真もストリーキングまでは予想していない。ただ、想悟の命令は聞かなくては今宵の責め苦は終わらない。  子供達が遊べるくらいなのだからそんなに広くはない敷地だ、走ればすぐに周ることはできる。  ただ、惨めな格好でそれができるかと言うと、よっぽどキマッていないと無理だ。  和真は当然、酒も薬物もやっていないし、常識的に考えてそんな乱心はできるはずがない。まあ、そもそも公衆の場でこんな行為をしている自体犯罪だ。  今さらながら下着を押さえて、辺りをきょろきょろ見回している。  膝は震えていて、もう立ってもいられないらしい。徐々にくずおれて身を丸めた。 「お、良いな、犬? 確かに散歩するなら四つん這いで歩いてもらった方が見応えはあるかも」 「ふざけんじゃねぇぞバカ!!」  さすがの和真もこればっかりは怒気を強めに叫んでしまった。  次の拍子には、しまったという顔をして、顔を地に向ける。 「時間、かければかけるほど誰かに見つかる可能性は高くなるよなぁ。やるのか? 犬の真似」 「…………うるせぇっ……やるよ……やってやりゃいいんだろ……」  こうなればもう自棄なのかもしれない。震える四肢を地面について、四つ這いになった。 「この分なら、首輪とかリードとか用意すれば良かったな」 「…………ふんっ」 (あれで終わりじゃなかったのかよ、ちくしょう……。しかもこの俺に犬扱いとか、マジでぜってー許さねぇからな鬼畜野郎が……)  ここまですれば当たり前だが、機嫌を損ねた。  それでも先ほどのように大きな声を上げることはなく、憎らしそうに鼻を鳴らすだけだ。 「なあ、母親の下着付けてるのってどんな感じ?」 「……どうでもいいだろ、そんなの……」 (どうもこうもあるかっつうんだ……嬉しそうに試着してるのは見慣れてるけど……チンコキツイいし……)  思いのほか想像と合っていた。 「チンポキツイのか」 「……っ! ……男なら、なんとなく無理やりしまってる時の感覚わかんだろ!」  指摘してやったら、条件反射だろうがビクッと震えた。 「ブラは?」 「知らねーよ! 隠すもんないのになんでこんなもん付けなきゃいけねぇんだよ!」  四つ這いというより地べたに這いつくばるような格好でこちらを睨み付けてくる姿は、まるで女豹のようで興奮する。  いや、犬か猫かどっちだ。そそるのは確かだから、どっちでもいい。 「まあ、軽口はほどほどにしとくか。ほらっ、歩いた歩いた。こっちだぞ和真」  先行して歩いてペットを呼ぶみたいに自分の膝を叩いて合図する。  面白おかしいことに、なんというか……和真は抜いたばかりだというのに、立派に勃起しているのだ。きつい下着にしまっているからこそ、隆起の大きさと先走りの染みが目立つ。  愛息子のカウパー染み付きパンツなんて返されたところで困るだろうな。  ただ、捨てるにしても、お気に入りのハイブランドランジェリーが失くなったことに気付いたら、夫と言うより性に興味がありそうな和真に疑いの矛先が行くかもしれないな……。  あの母親、PTA役員でもあるけど、逆鱗に触れたら最後、鬱陶しいったらありゃしないと教師の中でも好かれてはいないから。同じ新品をそっと返しておくか。 「ほら。早く動けよ。尻でも叩いてやらないと駄目か?」 「っ……! バカにすんな! お、おお、俺だって、この程度のことはできるんだ……そんで、すぐ帰るっ……簡単な話だ……」  そう言い聞かせて、奮い立たせる。  想悟はそんな和真が自分がいつ勃起しているか気付くかを待っていた。  意識が他にいっているせいか意外と気付かない。彼が自覚したのは股間のせいでだいぶ歩きにくくなってきてからだ。 (うわっ、嘘……なんで俺勃ってんだ……!?)  それなりに質量のあるものは、下着の中で窮屈そうにしている。  一方の和真は、全く意図しない身体の変化に驚き、混乱に満ちている。 「あーあ。ガッチガチじゃねぇか……。それじゃあ出さないとつらそうだな」 「っべ、別に、大丈夫……」 「なにも強がることないだろ。お前くらいの歳なら、ふとしたきっかけでも勃つよ。……まあ、奴隷扱いされてそれは……どうかと思うけど」  余計なことを言って羞恥心を煽る。想悟は一度、思案するように顎を触った。

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