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財前和真編14-4 ※和姦

「ごめん」 「な、なんだよ。謝罪なら、もう……」 「そうじゃなくて……お前の初めての経験を奪ったことも、すごく気にしてたから……さ」  和真は目をぱちくりとさせている。 「俺は、初めては無理やりだったし、キスも……実は、お前が……あの時が……初めてだった。だから、もしお前が良ければ……やり直したいんだ」 「は? え? 想悟も……俺が……初めて?」  明らかに狼狽える和真の顔が紅潮した。  たぶん、凌辱魔はそれはそれは経験のある男だと考えていただろう。それが蓋を開ければ脅されて全ての行いを中途半端にこなしていた少し年上の青年。  それらは決して許される行為ではないし、許されるとも思っていない。けれど、言わずにはいられず。 「お前とキスがしたい。……ふつう、に」 「……マジで言ってる?」 「うるせぇな。……大マジだよ」  ああ、今、顔面が茹でだこのように赤くなっているに違いない。その証拠に、和真も妙にそわそわしているから。  身体が全く動かない。いつもこれ以上のことをしているのに、何故だ? いざキスするとなると妙に意識して、緊張で身が強張り、震えてくる。  落ち着け……。深呼吸して吐き出した吐息も、なんだかか細いものになってしまった。  いつまで経っても何もしてこないものだから、耐え兼ねたのは和真だった。  想悟の後頭部を鷲掴みにし、自身の唇に勢いで重ねた。 「んっ…………ほらっ、した」  やっぱり照れているのか、顔は伏せている。 「……もっかいしたい」 「はぁ?」 「頼む」  純粋に物足りなさを感じた。だから年下の男として未熟な者に乞うてしまったくらいだ。 「今度こそちゃんとできんだろーな」  やれやれといった様子で小さく笑った和真。  ……この笑み、俺は知っている。カズマの悪戯っぽい笑い方だ。やっぱり、二人は表裏一体なんだ。 「和真っ……!」 「ん、んんッ……!? ちゅ、ぢゅるっ……ふぅ……れろぉ……んくっ、むふぅううっ」  何とも言えぬ劣情が湧き起こり、和真を思い切り抱き締めて口内をめちゃくちゃに貪った。ざらつく舌で彼のぐるりと舐り回し、唾液が溢れても止まらない。 (ちょ……さっきの舐めプだったのかよ!? 息できねっつの……ったく、いつも急に変なスイッチ入る時あるよなあんた!)  そんなこと言われたって、もう無理だ。全部欲しい。お前が欲しいよ。  酸欠気味になるほどの熱い口付けを交わしている間に、二人は流れに逆らえないままベッドに上がる。  と言っても和真が上にのしかかっていて、和真の股間に何かを押し当てている感覚があり、ようやく自分が立派に勃起していることに気付いた。 「ヤッバ。キスだけで勃つの?」 「そういう訳じゃなかった、けど……勃っちまったもんは仕方ないだろ……」  なんだこの中学生みたいな気恥ずかしさは。条件反射的に起き上がるが、今度は対面座位になった。 「あ……待て、この体勢は」 「嫌なの?」 「初めてが……その、こういう……」  司と無理やり交わった記憶が再び脳裏に過ぎる。あの時は、縛られて、全く動けない状態で高められてしまった。  だからという訳ではないが、対面座位は精神的にあまり気持ちのいいものではなかった。  和真は考え込むような振りをして、 「ふーん……でも、他の体位じゃあ、してあげない」 「なんだよそれ」 「俺は散々されたんだからさ、想悟のトラウマの一つや二つ、ちょっと抉っちまっても文句ないよな」  あと、と続ける。 「想悟の童貞奪ったのが誰だか知らねーけど、ムカつくからもう話すな」  意外な言葉だったが、想悟は黙って頷いた。和真ももちろん司とは面識があるし、とても言えたものではない。 (そんなの知りたくない、何だよ、こいつが誰とどうなろうが関係ねーだろ……。なのに……なんでこんなこと思うんだ……)  ただ、それよりも。独占欲と言って良いのだろうか。和真の心にいつからか宿っていた気持ちが、すごく嬉しい。  勝手に抱いてきた情でいい。洗脳ってやつでもいい。和真が受け入れてくれたというだけで感無量だった。  ほとんど和真のしたいようにやらせていた。シャツのボタンを外すのも途中で面倒臭くなったのか、一気に服を脱ぎ散らかす。想悟のシャツはずり上げるだけになった。 「……本当に、もう何でもないんだな」 「ああ。……また内臓引きずり出されるのは御免だけどな」 「さ、さすがにもうしねぇよ。グロいんだよ。……やったのは、まあ、確かに俺だけど」  そして、見るからにわかる隆起を撫でる。 (……これが俺に滅茶苦茶なことしてきた男か)  我ながら、押されたらすぐ気持ちが傾く。  童貞捨ててすぐ、命令されてテクニックも何一つないまま放り出された男。案外、チョロいだろ?  なんだか気迫さえ感じるような男性ホルモンを漂わせている和真。彼もヤる気満々なんだ。性と性のぶつかり合いでもって対話をしようとしているみたいだ。  布地越しに焦らした上でようやくペニスを取り出すと、輪っかを作った指でゆっくりと扱かれる。  すごく和真本位のやり方で責められている。でも、悪い気はしない。 「うっ……くふっ……それ、す、げぇ……」 「想悟もこんな風に感じるんだ」 「そりゃ、な……。躾ける主人が良いから、かな?」 「あんたってホント……こーいう時までんなこと言うか普通? まあ、俺も『射精するまで一生懸命扱いてください和真様』の一つくらい言わせようかなと思ったけど」 「ははっ……誰が言うかよ」  底意地悪く笑う和真。

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