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第13話 ※グロ(火炙り)

 夜になって、村の中央がどんな様子であるか覗き見た。  まだ朱の死体が串刺しにされている中で、村人はそれを囲うように普段通りの晩飯の支度を始めた。  村長が皆の前に出て一つ咳をする。 「飯の前に、火を焚かんとな。今日のはよう燃えるやつじゃぞ」  すると、村の男達は既に絶命している朱に日本酒をビシャビシャ浴びせかけ始めた。  次に取り出されるのは、小さなマッチ。 「あかねえぇえええええいやあああああああッ!!」  朱の母は、村の女性に「あの子は呪いに加担したのだから、仕方ないのよ」などと意味不明なことを言われながら、数人がかりで押さえ付けられている。  酒……マッチ……火を焚く……恐ろしい単語が頭の中で組み立てられていく。 「あああああああッ!! ぎゃああぁぁあああ!! ああぁぁぁぁぁ……っ」  朱に火が移った途端、泣き崩れる母とは正反対に村人達はまるで火の神への供物とするかのごとく舞い踊った。 「これで忌々しい人魚の仲間は浄化された!」  村長が嬉しそうに言う。  そうして、しばらくして鎮火すると、また新たな火をおこしていつも通りの飯。  朱が中心部にいるのに。まだ、黒焦げの彼女の異臭さえ、漂ってくるのに。  どうしてあの中で平然と居られる。話せる。飯が食える。 「あ……か……ね……わたしの、……あかね……」  朱の母は……今の光景で精神を病んでしまったようだ。あんな場面を見ては仕方ない。  やっぱり……どれだけ危険が伴うことでも、やるしかない。  真白を連れてこの村から出る。  あれを見てしまったからには、何の罪もない、ましてや災いを呼ぶ人魚扱いされている真白のことを放っておくなんてできない。  本当は明け方がちょうどよかったが、村人の男達のほとんどは漁師だ。朝はとても早い。  暗すぎて嫌だったが……真夜中に決行した。村に来た時よりは軽すぎるほど、リュックに最低限のものだけを詰めて、手動式の懐中電灯を片手にそそくさと家を出た。  真白は自宅に待機させていると、まずあの高圧的なおばが立ちはだかるだろうから、納屋に隠れさせていた。

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