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第14話

「真白……俺だ。いるか?」 「う、うん」  なるべく音を立てないように、そろりと歩かせる。問題はここからだ。  村に続く唯一の登りの道は急な斜面になっている。  けど、出入口である以上は人もある程度いる。  あそこさえ突破できれば、例え追ってきても広大な森のおかげで位置を誤魔化せる可能性はある。 「しっかり掴まっててくれ。俺の手を離すなよ」 「うん。でも……どうするの?」 「まずは合図を待つんだ」  しんと静まり返る夜の静寂の中、それは起こった。  爆発音が村中に鳴り響き、燃え盛る火炎がこちらからも見えた。俺の家として、ほんの少しの間だけ借りていたもの。  こう大きな規模になるかどうかは一か八かではあったが、爆発したということはカセットコンロのボンベに損傷があったんだ。  生活用にと事前に支給されていた油や酒を台所を中心に家全体にビシャビシャと撒き散らし、あとはいつも調理に使っていたカセットコンロの上に規格外の大きさの鍋を置いて加熱。ボンベが高温となるのを待つだけ。  すると、事前に撒いていた油や、元より古い家はボンベの破裂だけでは収まらず火の手がどんどん広がり崩壊する。  俺はそういった準備をして勝手口から出れば、すぐに真白と合流できる。  当然、まだ火事は火事でも放火か自然発火か何かもわからぬ状態のままでは、村中が慌ただしくなり、村人は消火に向かう。  その人通りが少なくなる隙を狙って山を駆け登った。  森は深く険しく、迷路のようだった。  最初に来た時も大人の足で、しかもまだ陽がある状態で三十分かかった。  誰かを連れて歩くのが、こんなに難しいことだったなんて。  きちんと真っすぐ歩けているかどうかも、コンパスなしでは自信がない。  周りに誰も居ないことを確認して、一時の休息をとることにした。木に寄りかかるようにして息を整える。 「先生。平気?」 「ごめん……少し休んだらまた歩こう」  駄目だ。体力がない上に、獣道の歩き方に慣れていない。こんなところでもたもたしている暇はないのに……。  ガサガサッと草むらが避けられる。  慌ててライトを向けると、そこには、彼女がいた。いつでも完璧に着付けをしてある、宵闇に溶け込む着物姿の椿が。

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